trendseye

産前産後ケアホテル

清水寺や三十三間堂にほど近い京都市東山区清水五条エリアに、今月「産前産後ケアホテル ぶどうの木 京都院」がオープンした。
「産前産後ケアホテル」とは聞きなれない施設名だが、母子のケアのスペシャリストである助産師が24時間常駐し、特に産後のお母さんの心身の回復を促すヨガや骨盤ケア、アロマオイルトリートメントなどを施す施設だという。プレオープンの段階から注目され、全国から集まった問い合わせが産後ケアへの関心の高さをうかがわせた。
現代でも「出産は女性が頑張るもの」という風潮がある日本だが、アジア諸国やヨーロッパなどでは既に『産後ケア施設』の利用が“当たり前”の国もあり、日本は先進国とは言えないようだ。
お隣り韓国では格差社会が進んでいることが功を奏し?、レベルの差こそあれ出産から産後までケアすることが当たり前になってきているらしい。お産の後はケアハウスへ入所するというのが一つの流れで、実家の親がケアハウス費用を負担することも多いと聞く。セレブリティ向けのリゾートタイプからコミュニティ型の庶民派タイプまで、さまざまな産後ケア施設が充実している。
ソウルの高級住宅地にあるサヌチョリウオン(産後調理院)「LA MADORE(ラ・マドレ)」は、出産予定日が分かり次第申し込まないと予約できないほどの人気だそうだ。医療面と産後ケアの両面から、専門的な知識を持つスタッフがママと赤ちゃんの生活をサポートしてくれる。
一方日本でも、妊娠から子育てまで切れ目のない支援体制の構築を目指して、フィンランドで実施されている「ネウボラ(相談)」から着想を得たワンストップ拠点「子育て世代包括支援センター」が2016年に開設された。現在、全国で9割を超す1603市区町村で稼働しているが、何故かあまり話題になっていない。
フィンランドでは妊娠中から子どもが小学校に就学するまで、各地区で妊婦1人に1人の常駐担当保健師がつき、同じ人が継続して支援する。日本ではまだそこまで行っていないようだ。
とは言うものの4月から不妊治療に対する公的保険の適用範囲が拡大、男性の育休取得の強化や産休の男性版ともいえる「出生時育児休業」の新設など、少子化対策も徐々に進みつつある。
何の不安も無く出産育児できる「産前産後ケアホテル」的機能が普及するには、更に高い税率を持って北欧型ケアを目指すか、いい意味で格差社会を利用してアジア型で行くか?
いいとこ取りしたい日本は、遅々として結果を出せないのだろう。

| 22.06.10

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.