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野営

国内のキャンピングカー市場が10年以上拡大し続け、販売台数を伸ばしている。日本RV協会発行『キャンピングカー白書2021』によると、2020年のキャンピングカー販売総額(新車・輸入車・中古車を含む)は、過去最高の約582億円となった。新車出荷台数は約8100台、保有台数は過去最高の12万7400台だ。2005年の販売台数約3500台、保有台数約5万台と比べると、15年で市場が3倍に迫る成長を遂げたことになる。
キャンピングカーは2008年に起きたリーマンショック時でも売り上げを落としておらず、最近ではキャンプと言えば「野営」、と大人の秘密基地や家族のふれあいの場として不況知らずだ。新型コロナ禍でキャンピングカーの使い道もさらに広がった。遊びに使うだけでなくリモートワークにも使え、災害のときの避難場所にもなり、更には新型コロナ隔離部屋という新しい利用法も想定に入ってきた。
リモートワークとデジタルデトックス、そのミックスユースの自由さが現代のライフスタイルにフィットしているのだろう。都心で“野営感覚“を味わう「キャンピングオフィス」も今人気だという。野外やオフィス内にキャンプ用テントを設置し、そこで会議やプレゼンテーションを行う。一人当たり1時間100円、サウナ付き、瞑想ルーム付きシェアオフィスやコワーキングスペースが広がりをみせる中、キャンプ用品大手のスノーピークグループがサービスを開始すると、3年足らずで全国400社以上に広まったそうだ。
渋谷のビル街ど真ん中にテントが張られ「野営」する。明治通り沿いの複合施設「渋谷キャスト」の広場でも法人向けオフィスとして時間貸ししている。いつもとは違った環境でブレインストーミングや社員同士の関係性を向上させる、などの目的で使われているそうだ。解放的でリラックスでき新しい発想が生まれるメリットがあるとのこと。
2年間のコロナ禍で “野営感覚”が身につくと、これまで当たり前だった「通勤」という概念も完全に崩壊していきそうだ。
「社員と社員」「社員と会社」の関係に新しい”自立“という距離が生まれている。ダメ押しはウクライナ問題だろう。たった1ヶ月で、近代都市だったキーウやマリウポリが廃墟と化すのを世界は目の当たりにした。NATOも米国も国連も武器は売っても日々の生活を守ってはくれない!ことがハッキリしたのだ。
仕事も家庭も“野営”を備える時代が来たということなのだろうか。これからはビデオ会議の裏で子供が走り回り、家にいてもキャンピングカーで生活し、いつでもどこでも“生き延びる”という備えが日常になっていくだろう。

| 22.04.08

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