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バイオホーム

建築技術における次の開拓領域は「建物を自然の一部にする」ことだと言われている。気候変動の危機に直面している中で、根本的な解決策として自ら自然環境を構築し、その中で暮らす「バイオホーム」を研究しているチームがある。
例えば、コロラド大学ボルダー校のエンジニアチームだ。彼らが開発した生きた微生物を使った建築材料「バイオマテリアル」は、3世代約100年にわたって増殖し、新陳代謝を繰り返しながら建築物を支えて行くことができるそうだ。
砂とゼラチンを混ぜたものにバクテリアのコロニーを加えると、生きて呼吸をする新たな建築材料「バイオマテリアル」が誕生する。これは“生物”なのでゆっくりと繁殖する。現代建築におけるブロックや石などの接着に用いると、しなやか且つ強固な建築材料となることが分かっている。その他、菌糸を使った「成長し続ける家」、バクテリアの力で「自己修復する壁」など、バイオ技術を駆使した「バイオホーム」が続々と研究対象になっている。
一方IT技術を駆使した「スマートホーム」も今大きな注目を浴びている分野だ。こちらは一足先に実用化されているが、スマートスピーカーにAI音声アシスタントが搭載され、家電製品からキッチン、窓、バスルーム、そして鍵などセキュリティに関わる全てを一元的に管理する家だ。話しかけるだけで家のあらゆるものがコントロールでき、別名「コネクテッド・ハウス」とも呼ばれる。IT業界、家電業界、不動産業界が入り乱れる先進的戦略事業分野だ。
ロボット掃除機、iRobotルンバも「コネクテッド・ハウス」の一部だ。部屋を隅々まで掃除しているように見えて、実は部屋の間取りからユーザーの生活情報全てを収集し、スマートスピーカーに送信しているのだ。便利だけれど、ユーザーは生活行動をすっかり把握され、コントロールされる!?IT産業は皮肉なことに大規模な管理社会を作り出しているともいえる。
先日政府が発した“電力需給ひっ迫警報”は、IT化された「スマートホーム」が安定した「ベースロード電源」あっての物種だということを印象付けた。スマート化された「バイオホーム」は、自然エネルギーによって「ベースロード電源」を確保するので確実だ。日本でも「負ける建築」を著した建築家隈研吾が、高知県梼原町などで実験している。
江戸時代の伝統的木造建築が生きているかの如く”漆喰“によって守られたように、現代における「バイオホーム」も、成長し、呼吸し、さらには繁殖する。
「バイオホーム」の原型は、意外にも既に江戸時代の日本にあったのかもしれない。

| 22.04.01

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