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グリーンなパリ

2024年夏のオリンピックを控え、パリでは今関連の工事が急ピッチで進んでいる。「オリンピック史上最もグリーンな大会」を目指すそうだ。東京オリンピックがハコモノ建設中心の汚職に満ちた史上最低のオリンピックと言われる中、パリは住人の意見を取り入れ、グローバルな環境都市への生まれ変わりを目指して独自のアプローチをしている。
エッフェル塔からイエナ橋を渡ってセーヌ川を越えトロカデロ広場に至る地域約45ヘクタールを、緑地化して巨大な庭に変えるという。市内の自転車レーンを充実させて車優先だった街を人間中心に変え、広場はゆったりとした歩道に、環境に配慮した新建築が次々と建設されるそうだ。オリンピックをきっかけにパリは都市と人間生活の関わりを見直し、EV中心のカーボンニュートラルな新しい都市造りを行う決意を見せている。
近代オリンピックは、フランスの貴族であったピエール・ド・クーベルタン男爵によって考案された。彼は普仏戦争で屈辱的な敗北を喫したフランスに再び活気をもたらすために、1894年に欧州や北米のスポーツ団体、ギリシャ国王やイギリス皇太子などの貴族たちを集めて、ギリシャのオリンピック精神を近代オリンピックという形で再生復活させたのだ。
しかし現代のオリンピックは「五輪」という世界経済イベントとなり、開催国が抱える経済問題を解決するために巨額を投じることは是とされた。その結果、東京五輪は建設会社の利害で予算獲得の草刈場の様相を呈し、当初予算7340億円が3兆6800億円になるという、先進国とは思えぬほど腐臭漂うものとなった。
パリオリンピックの競技は市の中心部と北に位置するサンドニ地区に分かれて開催され、選手村はサンドニ地区に作られる予定だ。同地区はさまざまな国から流れてきた人たちが暮らし、貧困層が多く犯罪発生率も高い。15年に起こったパリ同時多発テロの源流となった問題の地区だが、五輪開催でサンドニを再開発し雇用も生み出すのが狙いだという。
東京オリンピックのテーマが「多様性と調和」だと認識する人はどれだけいただろう?国は一体どういう社会の課題を解決しようとしていたのだろうか?
高い志を持って自国の発展をイメージできない国家には衰退しかない。古臭い会社にオリンピック運営をただ丸投げする日本。自前で旅客機の開発もままならず、ロケットすらも打ち上げられない企業に国家防衛を託す依存型の国は、アメリカの廃棄するトマホークを爆買いするしかないのか。

| 23.03.10

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