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オミクロン

最近よく聞く「Oo(オミクロン)」 とは、「Aα(アルファ)」に始まり「Ωω(オメガ)」に終わる全24文字あるギリシャ文字の15番目の表音文字である。
ギリシャ文字は、セム系の文字であるフェニキア文字から古代ギリシャ人が紀元前10世紀から前9世紀頃に作りあげた文字で、ローマ字やロシア文字の基となった。「オ・ミクロン」とは「小さいO」という意味で、「オ・メガ」(Ω)と対になる名前である。
世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスを識別するために、ギリシャ文字を使って発見された順序を示している。南アフリカで確認されたウイルスは13番目の変異株だが、何故か15番目の「オミクロン株」と名付けられた。その理由は諸説あるようだ。
日本では政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の名前が使われていると思った人もいたようだが、そういう安易な理由ではなかった。
ギリシャ文字は円周率のパイ(π)、総和のシグマ(Σ)など、数学や物理、天文といった自然科学系の学問で記号として用いられていて日本でも馴染み深い。ちなみに車の世界でも1906年創業のランチアが車名にギリシャ文字を使っている。アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ、カッパ、ラムダ等の名車を今でも覚えている人は多いだろう。
新型コロナウイルス変異株は当初英国株やインド株等と呼ばれ、初めて確認された国名を呼称に使っていた。ところが今年5月末に呼称となる国への差別につながる恐れがあるとして、現代の価値から切り離された中立的な記号のギリシャ文字の使用が奨励され、アルファ(α)株、デルタ(δ)株などと呼ばれることになった。
感染力が強まったり、ワクチンの効果が下がったりする性質を持つとみられる変異株は「懸念される変異株(VOC)」と分類され警戒される。今回、オミクロンがVOCに指定されたことで、世界中でこの呼称が広く認識されるようになったとも言える。
オミクロン(o)以降のギリシャ文字は、パイ(π)、ロー(ρ)、シグマ(σ)、タウ(τ)、ユプシロン(υ)、ファイ(φ)、カイ(χ)、プサイ(ψ)と最後のオメガ(ω)まで残り9文字しかない。新たな変異株の出現がオメガを超えないことを祈るばかりだ。
ちなみに映画『女王陛下の007』で登場した細菌兵器はオメガ・ウィルスだった。オメガの意味は“永遠”。コロナウイルスも「オメガ」まで行って永遠の命を手に入れることがあるのだろうか?
「小さい」ことを表す「オミクロン」には、パンデミックはここで止ってほしいというWHOの願いが込められているのかもしれない。

| 21.12.10

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