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親ガチャ

9月の初め頃からGoogleで「親ガチャ」という単語の検索回数の急増が見られたそうだ。毎年恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされ、若年層で広がりをみせている。
「親ガチャ」とは子どもは親を選ぶことができないという意味で、“運命”に似たニュアンスを持つ。運の要素が強いカプセル式自動販売機「ガチャガチャ」に例え、生まれる家庭環境は運頼みなのだと半ば努力を諦めた言葉だ。生まれによって人生がまるで違ってくるという思いも表している。
「親ガチャに失敗したんだ。だからどうせダメなんだ」と思う子が増えているとしたら、日本人の活力は人口の減少以上に劣化しているかもしれない。自分の境遇を運のせいにし、諦めることで納得しようとする。だとすると「親ガチャ」という言葉は、格差社会の悪影響が子どもたちに予想以上に及んでいることを示している。
中国にも人生は遺伝子と環境が重要という考え方から「原生家庭」という言葉がある。どんな家庭に生まれるかが子どもの一生を左右するという意味だそうだ。
家庭環境が「絶対的」とされる韓国ではもっと露骨な「スプーン階級論」がある。親が富裕だったり高位だったりする度合いで金、銀、銅、泥と序列をつけ、「収入」や「資産」によって色分けする。「親ガチャ」という概念の蔓延は世界的にも抗し難いものになっている。
国内で児童相談所が2020年度に「児童虐待」として対応した件数が20万5千29件に上ったことは、「親ガチャ」論争の中で無視できない社会現象だ。今年8月の厚生労働省の発表では、虐待は1990年度の統計開始以降30年連続で最多を更新し昨年は20万件を超えた。少子化の中でも「児童虐待」だけは着実に増えている。
子ども世界の「親ガチャ」意識の蔓延は、親による理想的人生の押しつけやネガティブバイアスの刷り込みなどに対する警告ではないだろうか。先天的なもので「親ガチャに失敗した」と子供に言わしめない社会環境づくりが必要なのかもしれない。
昨今活躍するスポーツ選手や芸能人に驚くほどハーフが増えている。日本人ほどハーフに寛容でそのルックスの良さを評価する国民も珍しい。2016年厚生労働省の人口動態統計によると、2015年の1年間に日本国内で生まれた赤ちゃんは約102万人。そのうちの3.27%にあたる33,393人(30人に1人)の親は少なくともどちらかが外国人だったそうだ。東京に限定すると20代の若者の10人に1人は、かなり外国人の血が濃いエキゾチックな風貌をしているように見える。
「親ガチャ」を逆手にとって、したたかにDNAレベルで人生を逆転しようとする日本社会の深層心理がそうさせているのかも知れない。

| 21.11.19

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