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Japandi

アールヌーボー建築で有名なパリの老舗百貨店オ・プランタン本店、ガラス天井から自然光が差し込む最上階に今年9月、SDGsをテーマにした新しいコンセプトフロア「7eme Ciel(セッティエム・シエル=7階の空)」が誕生した。
ハイブランド&クリエイターズブランドのビンテージ物やセカンドハンドを販売、商品の買取りも行うというデパートとしては斬新な取り組みで、オリジナルの製品よりも次元・価値が高いものを生み出すアップサイクルサービスを提供して話題になっている。
注目されているのはそのフロアの一角にある「Japandi」というショップ。Japan(和)とScandinavia(北欧)の要素をミックスしたデザインショップで、日本の「和」に見られる「侘び・寂び」の素朴さと、北欧のデザインにある「機能性」を重視したモダンインテリアスタイルを提唱している。
伝統的な日本様式と北欧様式の共通項は、木製品や自然素材を多く使っていることだ。モダンスタイルの中に工芸品や職人の手による家具・インテリアを取り入れていることが「Japandi」スタイルづくりのカギになっている。華美な装飾は控え実用性を重視した素朴なもの、さらには長く使えることを前提に「土に還る」「できるだけ地球を汚さない」といった点も重視している。
「Japandi」 スタイルはSDGsな暮らしに沿ったアイテム選びに必要不可欠な要素となった。
日本でも最近障子を洋室に使う手法が人気を集めているが、「障子=和室」ではなく洋室に合わせて限られた空間を圧迫感がなく仕切るのにぴったりだ。布製のカーテンと比べて埃が付きにくいこともあって再評価されている。
ネット通販の拡大とコロナ禍でパリの百貨店もご多聞にもれず縮小の一途をたどっていたが、「体感」をリアルの強みとして打ち出し、2024年のオリンピックに向けてポストコロナの観光客増へとアピールを開始したようだ。そうした中でも「Japandi」は時代を先取りしたインテリアスタイルとして注目を集めている。
スカンジナビアデザインの中心はデンマーク王国。代官山のデンマーク大使館は建築家槇文彦の代表作品「代官山ヒルサイドテラス」の一部として1979年に建てられている。同時期のヒルサイドテラスD棟のガラス窓には、障子をガラスで挟んだアルミのサッシのものが多く用いられ、外からの強い光を優しい明かりへと変えている。槇文彦は40年も前から既に「Japandi」スタイルの実践者だったのだ。
デンマーク大使館が槇文彦を受け入れヒルサイドテラスの一部としてデザインされたのは、今考えると単なる偶然ではなかったのだろう。

| 21.11.05

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