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senpai

ここのところの日本や韓国スポーツ選手の米国進出には目を見張るものがある。先週の全米女子オープンでの日本人同士のプレイオフも凄いが、野球メジャーリーグでの大谷翔平選手の活躍も話題をさらっている。2番・ピッチャーで先発するリアル二刀流が実現、ホームランでリーグ1位の選手が先発投手をつとめるのは1921年6月13日のベーブ・ルース以来なんと100年ぶりの快挙だといい、当然地元のファンも多い。
そんな大谷選手へスタンドから「先輩(senpai)、私に気づいてください!」と日本語でメッセージを送る現地の女性ファンの姿が話題になった。
“senpai(先輩)” を画像検索してみると、“Please notice me, senpai”、“SENPAI NOTICE ME!” などと書かれたイラストが多く出てくる。
アメリカの“senpai”は日本の漫画やアニメの影響から、どうも「憧れの先輩」「自分の気持ちに気づいてくれない人」という恋愛系の意味で使われているようだ。
韓国語でも最近全米に知られ始めた言葉がある、「naeronambul(ネロナムブル)」だ。「自分がすればロマンスだけれど、他人がすれば不倫」という意味の造語で、自分や身内に甘く、外の人間には厳しいという韓国独特の二重基準を指す言葉だという。
英語ならさしずめ「ダブルスタンダード」だが、それでは韓国語の真の意味は伝わらない。そのニュアンスを表すためにニューヨーク・タイムズ紙はアメリカ人の読者に向けて敢えて「naeronambul」と韓国語そのままに表記、英訳しないことが肝要だ。
アジアのサブカルチャーに触れたいという世界の若者のニーズは、日本人が思う以上に大きい。ワクチン接種を終えた若者は、国際的な文化・スポーツイベントの再開を待ち焦がれている。
日本がG7入りし経済力で影響力を持った時は、欧米社会から“黄禍”として文化的な反発を食らった。その後経済的に普通の国になった途端?に世界が日本のエキゾチシズムと同期してきたのは面白い。
オリンピックに海外からの観客が来ないのは残念だが、警備を厳重にして観客が入ればいいというものでもない。ものすごい警備の中30分でコンサートが終わった1966年ビートルズ初来日公演を思い出す。
コロナ禍は一種のバイオテロだ。目に見える実弾戦争の時代は終わり、世界はハッキングやバイオテロが横行する次のフェーズに移っている。一方若者たちの間では“senpai”のように言葉の壁を超えた異文化の融合が普通のことになってきた。
他国の観客から「senpai, notice me!」のようなメッセージが出てこそオリンピック開催の意味があるのだろう。
経済復興のためというのはG7の為政者の幻想だ。

| 21.06.11

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