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家に族

UQ三姉妹が「UQ学割」を紹介するau携帯 のCMで、「家に族と書いて家族!」と謎めいた長女の一言に、三女が「何それ?」とクールに突っ込みを入れるシーンが出てくる。このCMは時代と共に変わりゆく家族の雰囲気をよく捉えている。
東京では足立区が自治体として初めて、LGBTなど性的少数者のカップルの関係を公的に認め、その子どもとの親子関係も認める「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を4月1日からスタートさせた。
これにより法律上の婚姻や事実婚、親子関係に基づく入居が条件だった区営住宅にも、同性カップルが子どもと一緒に入居できるようになった。
これは「家族」の概念を広げて多様性を受け入れていく上で大きな前進だ。欧米ではいち早く家族の多様化を受け入れる動きが広がっている。“Chosen Family (選択的家族)” と呼ばれ、血縁的なつながりにこだわらずに自らの意志でメンバーを選ぶことすら可能になっている。
これまでの一親等の親子のみで形成された「核家族」に反発して、アダプトした子供を含めるなど伝統的な血縁関係を超えて幅広くメンバーを受け入れ、知的興味や趣味などお互いの共通項を通して “家族” を創っていこうとする、より自由度の高い取り組みだ。
マンハッタンにある私立学校ザ・グレイス・チャーチ・スクールでは、「すべての家族はユニークだ」をモットーに、“伝統的家族” という概念を極力取り除く実験をしているそうだ。「校内をよりインクルーシブにすること」を目指して、「両親」や「親」の代わりに「Guardian」や「Partner」「Spouse」などの呼び方を推奨している。
実際アメリカではシングル・ペアレントや複数の義母、義父を持つ子が珍しくない。近年は同性の2人親も増え、3人親制度も徐々に進んでいることが背景にあるようだ。
イギリスの大手メディアエージェンシー「the7stars」の調査によると、イギリスに暮らす世帯の12%は自分たちのルールに従って家族構成を決定する自発的 “Chosen Family” に挑戦しているという。
また最近全米リアルター協会(NAR)が「2020年第2四半期の住宅購入者の15%が多世代型住宅を購入した」と発表した。2012年の11%から明らかに増えてきており興味深い。
新型コロナ禍により産まれたニューノーマルな生活は、核家族化が進んで荒んだ家族生活を、リソースを共有することで再生していくことが大切だと気付かせてくれた。
日本の政治家も、荒んだ家族のサポートや新しい創造的未来に必要なのは「こども庁」ではないことに早く気付く必要がありそうだ。

| 21.04.09

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