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アンダーコントロール

最近人口1万8千人のパラオ共和国で、全部で9機しかないATMのうち8機が故障したそうだ。故障は以前から度々あったためか予想の範囲内で、パニックにはならなかった。
はからずも日本では某メガバンク約6000台のATMの80%にトラブルが発生、ほとんど同じタイミングでATMから現金が出てこないという事態に見舞われた。日本の場合「ATMにキャッシュカードが吸い込まれる」とは誰も考えておらず大騒ぎになってしまった。
パラオのATMトラブルは離島小国ならではの事情もある。直せるエンジニアは1000キロ以上離れたお隣のグアムにしかいない、しかも故障したATMのうち2機は紙幣不足での停止だ。元々自国通貨を持たずUSドルを使うパラオは、通貨も米国からの輸入品。戦前は日本円を使っていた国だ。新型コロナの影響で観光客はゼロ、帰国する外国人がドル紙幣を持ち帰ってしまったことが痛い。パラオのATMの故障は、ある意味国民が状況を把握しているアンダーコントロール下で起きたと言えるだろう。一種のあきらめ感が漂う。
翻って日本の某メガバンクの場合はどうだろう?勘定元帳を20年間合併前の状況で運用していたのに統合完了と発表していた。しかも何故かメガバンク相互のATM利用網から外されていた中、決算月末の事故だ。さらには4月からPayPay銀行とLINE新銀行の2つを抱えることになっているのだ。これだけのATM停止が予備情報もなく突然起こっては誰でもパニックになるであろう。情報隠蔽による人災である点がパラオと異なる。
今回のATMトラブルに限らず、このところ日本において大組織の隠蔽体質による機能不全が多く見られることが心配だ。
例えば「聖火リレーも危ぶまれるオリンピック開催は誰のため?」「検査数分母を知らせない新型コロナ陽性者数は誰が決めている?」「ワクチン担当大臣を別に置くなら厚労大臣の仕事とは?」、誰も答えずに国会は続く。
「福島原発の燃料デブリは地中にあるのか?」「原発解体で東京電力は100年安泰?」「メガバンク統合と言いながら20年以上も社長を交互に出す?」を放置することの無礼。
「接待規約を厳密に適用すると課長以上が全員いなくなる霞が関」のモラルの欠如。これら政府による不誠実な隠蔽体質は枚挙にいとまがない。利益と保身のためなら何でもやるのか?
これら全てに共通するのはトップの情報開示への勇気と信念の欠如だ。「全てアンダーコントロールだ」と開き直った首相もいたが、念仏のように「専門家に聞いて決めたい」と言い続ける現役も問題。
専門家とは誰のこと?「AIに聞いて決めます」の方がまだマシだ。

| 21.03.19

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