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キノコ(菌糸体)ライフ

食用以外の分野で、キノコ(菌糸体)を原料とする各種製品が今注目されている。
サンフランシスコ発のスタートアップ企業ボルト スレッズ(BOLT THREADS)社は、菌糸から人工タンパク質を作る技術を応用した人工レザー「マイロ(MYLO)」を使った商品開発に力を注ぎ、アディダスやケリンググループ、ステラ マッカートニー、ルルレモン等のブランドと戦略的パートナーシップを結んだと発表した。2021年の商品化を計画しているそうだ。
ボルト スレッズ社は人工クモの糸素材「マイロシルク(MYLOSILK)」で知られ、出資者にシンガポール政府のベンチャーキャピタルのテマセク・ホールディングスや、グーグルの元CEOエリック・シュミットのイノベーション・エンデバーズ投資ファンドなどが名を連ねていることでも有名だ。
「キノコ(菌糸体)」は日常的に目にする傘の部分だけを見て「キノコ」と呼ばれているが、実際には菌類の子実体であり、生物としての本当の姿は土の中などに張り巡らされた菌糸の集まりだ。
菌糸体は地上では目立たないが生態系において重要な役割を担っている。菌類全体で少なくとも 150 万種以上が地球上に存在すると推定され、まだまだ未知の菌類がたくさんあると言われている。
しかも安全で生命力が強く生物分解(生分解)性に優れており、分解に数百年を要するプラスチックや合成素材とは異なる。菌糸体を原料とした製品はライフサイクル終了後に自然の中で分解されて消えてしまうので、正に「サーキュラー・エコノミー」の担い手として期待されているのだ。
廃棄物の低減を目指した「サーキュラー・エコノミー」は、アクセンチュア社の試算によると2030年までに世界で最大450兆円以上の経済効果をもたらすと言われている。
例えばオランダの新興企業ループ(Loop)社は昨年11月、木ではなく菌糸体でできた「生きた棺」を発表した。棺の中のコケのベッドが腐敗した遺骸を植物の栄養分に変え、遺骸の分解を促進するという。埋葬後は地下水分の作用で30-45日以内に棺は溶けてなくなり、遺骸の分解も推定2-3年、と従来よりはるかに短いそうだ。
時代は長持ちさせるモノづくりから、役割を終えた後に自然の負担にならないことが大切になってきている。
新型コロナ禍で、昨年1年間に15億枚以上の不織布(プラスチック由来)マスクが海に捨てられたそうだ。人類が新型コロナ感染症に勝利するためとは言え、新しい環境問題を産み出しては意味がない。
「キノコライフ」は世界を救う。

| 21.01.29

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