trendseye

ミライ

日本もついに、2030年代にはガソリン車の新車販売を停止するとのステートメントを世界に向けて発信した。これで主な自動車生産国の方向性が定まり、2030年代にはガソリンエンジンだけの新車発売はほぼ無くなることとなる。
次世代車として各メーカーから電気自動車の新型が続々と発表される中、トヨタは満を持して12月9日、水素燃料電池車(FCV)「MIRAI」の次世代モデルを発売した。FCVは電気自動車の更に先をいく「ゼロエミッションカー」として注目されており、排出物は何と水蒸気(H2O)だけだ。
注目されるのは、PM2.5レベルの細かい粒子に対応するダストフィルターは当然のこと、ケミカルフィルターで窒素炭化物や硫黄酸化物といった化学物質をも取り除くらしい。つまり走れば走るほど空気をきれいにする新概念「マイナスエミッションカー」というわけだ。
きれいにした空気量は、センターディスプレイ上で分かりやすく表示される(空気清浄メーター)とのこと。「マイナスエミッション」という概念の提案は、テスラにやられっぱなしにはしない!というトヨタの意気込みを感じさせる。
ところで電気自動車の世界を牽引しているテスラは、株式時価総額で60兆円を超えトヨタを倍以上上回ったが、2019年の年間生産台数はまだわずかに36万台だ。1000万台に迫るトヨタやVW、500万台のホンダや日産に比べると数十分の1以下という水準である。収益性でもようやく12か月連続で黒字を計上するところまできたばかりで、いわばよちよち歩きの状態だ。しかし自動車という巨大産業の未来を見せるという点で、世界的に優れたプレゼンテーションを成し遂げ、それが巨大な時価総額につながっている。
だが電気自動車の世界でテスラも安泰な訳ではない。そのテスラを上回る走行距離を実現するベンチャー「Lucid Motors」が登場し、米国ではテスラキラーと称される。こうしたシリコンバレー的電気自動車開発に対して、どのような新発想で優位性を見出していけるかが既存の自動車メーカーの最大の課題だ。
もともとテスラの15%の大株主でもあったトヨタは、数年前にその全株を潔く売却している。テスラと決別し自らの発想で世界の人々を幸せにするという道を選んだのだ。
トヨタは真のテスラキラーになれるだろうか?
戦後「いつかはクラウン」の標語で日本人の憧れだったクラウンを、トヨタは現モデル世代で終了するという。この噂に信憑性があると感じるのは、新型ミライが横から見ると現行クラウンにそっくり、しかも車体構造の基本であるシャシーのホイールベースが2920mmと、クラウンと全く同じなのである。
たぶん偶然ではないだろう。

| 20.12.18

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.