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電力の質

ボストンコンサルティンググループ(BCG)は今年1月、「世界の電動車(xEV)シェアが2030年に51%へ、日本は2030年に55%、ハイブリッド車は引き続きシェアを維持」という調査結果を発表した。
日本は電気自動車の開発が遅れていると言われるが、それはバッテリー型電気自動車(BEV)だけを見た場合で、ハイブリッド型(HEV)を含む電動車(xEV)のシェアでは意外にも世界をリードしている。しかしどれだけxEVのシェアが高くても、温暖化ガスの排出を減らした質の高い電力供給がなければ最終的には意味がない。
福島原発の事故前は全国で54基が稼働していた原発大国日本だが、10年で稼働はわずか4基のみという原子力比率(6%)の低い国となった。結果、一時的に電力供給を化石燃料に頼る発電後進国となってしまったが、原発からの撤退では世界から評価される国に位置付けられている。皮肉なものだ。
日本のエネルギー政策「エネルギー基本計画(エネ基)」では、2030年の電力供給の27%を天然ガス、次いで石炭26%、原子力20~22%、石油3%、そして再生可能エネルギー22~24%としていた。
ところが国際エネルギー機関(IEA )のMonthly Electricity Statisticsによると、2020年上期で日本の再生可能エネルギー比率は23%に達し、2030年度目標を10年も早くクリアしたようだ。
そして今年予定されている「エネ基」の改訂では、2030年の自然エネルギー比率をIEAの世界目標を大きく上回る30%以上に引き上げ、「電力の質」の向上にも挑戦するらしい。
そうなると日本の残された課題は、石炭火力発電26%への依存度を如何に下げるかである。英国は2025年までに、ドイツも2038年までに全廃を表明している。
各国の「電力の質」と共に、人口当たりの電力消費量も重要な指標だ。IEAの2018年のデータによると、意外なことに再生エネルギー発電100%のアイスランドが、実は一人当たりの電力消費量(MWh)では57.4MWhと突出して高い。2位はノルウェーの28.1でカナダ17.9、スウェーデン16.5と続く。人口が少なく再生可能エネルギーに恵まれた国は、逆に電力効率の悪いインフラを未だに使っているとも言える。
日本は8.3でフランスの8.6、ドイツの7.9と並ぶ。これは米国の13.2や台湾の12.7、韓国の11.1と比べ低い数字だ。2011年に日本を襲った強制的電力危機?は、消エネ技術開発が進むことに繋がった。
日本には福島第一原発事故の教訓から、「電力の質」の向上と効率的電力消費の両面で世界をリードすることが望まれる。しかし皮肉にも地球上のエネルギー資源は、元をただせば全て「太陽」という巨大な核融合炉が作っていることも現実だ。

| 21.03.12

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