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次世代原発

先週IHI(石川島播磨)が、日揮ホールディングスに続いて次世代の小型原子力発電事業に参入すると発表した。両社は米国の原子力ベンチャー、ニュースケール・パワーに出資し、米国での「小型モジュール原発(SMR)」に中核機器を供給する予定だという。
日立も米GEと組んで日立GEニュークリア・エナジーを設立、SMRの開発を進めている。
東電福島第一原発の事故をきっかけに日本では原子力産業が行き詰まっている。米中露はそんな日本を尻目にちゃっかりと、「ゲームチェンジャーになれ」とばかりにSMR開発に邁進しているのだ。韓国の斗山(ドゥサン)重工業も米国で独自設計のSMRの認証を取得し、日本より一足早く実用化を狙っている。
米国だけでも10以上の原発ベンチャーが次世代型SMRの開発にしのぎを削っている。今まで世界で主流だった150万KWを超える「加圧水炉型原発(PWR)」に比べ、SMRの出力は僅か6万KWと小さく、炉心の大きさは約20分の1で開発スピードも早い。
先行するニュースケール・パワーは、オレゴン州立大からスピンアウトして2007年に設立された大学発ベンチャーだ。

日本の大企業が古いPWRの廃炉に30-40年かけている間に、米国の若いベンチャー企業や韓国、中国はSMRの開発で先行していくだろう。
ビル・ゲイツも次世代原発を開発するテラパワ一という企業に出資し、5年後の試験運用を目指している。彼は「気候変動への対処には原子力が理想であり、事故のリスクは技術革新により克服可能」と誤解を恐れず大胆に発言。さらに「SMRは米国の過去の核廃棄物である劣化ウランを使い、小型で燃料交換が要らず、米国の電力需要を800年以上に亘って安全に賄うことができる」と訴えている。
日本政府の「エネルギー基本計画(エネ基)」が今年改定されるが、既存原発の再稼働をベースにしようとしていて歯切れが悪い。案の定4月末には老朽化した美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働を福井県知事が認めている。
日本は唯一の戦争被爆国であり、戦後原子力の平和利用を掲げて米国のPWR型原発を率先して導入した国だ。そして福島の事故後、原発解体の重荷を一身に負わされている国でもある。
太陽光・風力発電等再生可能エネルギーの活用は大いに進めてほしい。しかし旧型原発の再稼働を進めるぐらいなら、ビル・ゲイツの思惑とは別に、過去の核廃棄物の処理と並んで環境に配慮した未来志向の次世代原発を考えることができるだろう。
かつて原発先進国だった日本は世界の次世代エネルギー産業をどう導くのか?政府のセクシーなプランをぜひ聞きたいところだ。

| 21.06.04

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