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GEISHA(ゲイシャ)

秋鯖の美味しい季節になってきた。しかし庶民のサラメシの定番“サバ定食”のサバは殆どがノルウェーからの輸入品だそうだ。日本はサバの漁獲高を誇る国だが、獲ったサバはいったいどこへ行ってしまうのだろうか?
2016年度の日本のサバ漁獲量は約49万トンで、中国(約50万トン)に次ぐ世界第2位。このうち半分の約25万トン(2018年度)を海外に輸出している。一方輸入は約7万トン(2018年度)で、そのうちの9割がノルウェー産である。
日本のサバの輸出先第一位は、なんと西アフリカ最大の国ナイジェリアだそうだ。ナイジェリアのスーパーでうず高く積み上げて販売されている『GEISHA(ゲイシャ)』ブランドのサバ缶。
販売している川商フーズによると、アフリカでは60年以上にわたって販売されてきた人気商品で、特にナイジェリアでは国民食並みだそうだ。アフリカでは日本の『GEISHA』のイメージが、なんとサバ缶なのだ。
日本の太平洋岸で水揚げされるサバは秋が旬で、「秋サバ」と称される。太平洋沿岸を回遊するサバは伊豆半島沖で春頃に産卵し、餌を求めて北上する。八戸沖で水揚げされる「戻りサバ」は最良とされるが、九州沿岸で水揚げされるサバは冬が旬で、俗に「寒サバ」と称される。
ノルウェー産は大型で高価であるが脂が乗っておいしく、日本のスーパーで販売されるサバの7割(2018年度)を占める。片や日本で主に漁獲される小型のサバは更に2年間育てて獲れば、ノルゥエー産にひけをとらないのに、主に缶詰(サバ缶)に加工されるたり、「生餌」としてブリやマグロなど養殖魚のエサにも使われる。
川商フーズの『GEISHA』ブランドは、小さな魚まで根こそぎ獲ってしまう、海洋資源管理が進んでいない日本漁業の構造的産物と言えるかもしれない。
一方、原材料の70%がサバで、今年発売され超人気になっているスナック菓子「サバチ」にも同じ問題が潜んでいる。「サバチ」はタイで千年も前から親しまれてきたサバチップスがヒントになっているそうで、タイが原産国だ。
日本は近年かつてないサバブームだが、日本で獲れた小型のサバは国内で流通せず安価でアフリカやタイに輸出され、庶民のサラメシ用の大型のサバは殆どノルウェーから輸入される。何か矛盾を感じる。
資源保護の観点から、付加価値の高い、育てて獲る漁業を目指して根本から考え直す必要があるだろう。サバをほとんど食べないノルウェー漁業者のカモになるという愚行を、早く止めなければならない。
しかも、世界では日本が海洋資源を食い尽くす元凶だと思われているのだ。

| 20.10.02

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