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ジーランディア

今年、ニュージーランドの研究機関GNSサイエンス(the Institute of Geological and Nuclear Sciences Limited)が、ニュージーランドとニューカレドニアを残して約2300万年前に海面下に没した8番目の大陸「ジーランディア(Zealandia)」をこれまでにない詳しさで地図にして話題になった。
「ジーランディア」を知ることは、約8500万年前から6000万年前にかけてオーストラリア大陸から離れたプレートが生物の進化と淘汰にどのような影響をもたらしたかを知ることでもあり、地震や火山活動の予測と防災に大きく寄与するだろう。
最近、世界的に自然災害が大型化して”想定外”の被害になっていると言われる。しかし地球史的に見れば過去に幾度も繰り返されたことであり、特段想定外なことではない。我々は未だにドロドロに溶けたマグマの上で活動している訳で、防災にはグローバル史観を持った教育が大切であると言われる所以である。
「ジーランディア」発表より前になるが、グローバル史観を軸に書かれたユヴァル・ノア・ハラリの著書「サピエンス全史」も2014年にヘブライ語から英訳されるやいなや世界的ベストセラーとなった。
約250万年前にアフリカでホモ(ヒト)属が進化すると、50万年前からはヨーロッパを中心にネアンデルタール人の進化が起こり、次いで東アフリカでホモ・サピエンスが進化を始める。1万3千年前までにネアンデルタール人やホモ・フローレシエンシスが絶滅していく中、ホモ・サピエンスは瞬く間に食物連鎖の頂点に立ち、現在に至る文明を築くことになる。
ハラリは全人類史をグローバル史観から俯瞰し、ホモ・サピエンスは何を望みそのテクノロジーは人類をどのような世界に導くのか、これから我々がたどるであろう未来までをもリアルに予言してみせている。
グローバル史観を持つと、植物光合成で酸素濃度が過剰となった地球が、如何にして酸素を消費して二酸化炭素を排出する生命体(動物)を生み出し、サピエンスが生き残ったかを理解することができる。
逆にグローバル史観の不足は、未来を予測する力に限界をもたらす。ハラリはホモ・サピエンスにまつわるスケールの大きい物語、いわゆるビッグピクチャーを描いた教育が必要だと説く。
例えば、太平洋プレートが北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピンプレートと複雑に衝突する場所に位置する日本列島をビッグピクチャーで考察すると、プレートの衝突に伴うあらゆる自然災害に見舞われる運命にあることが容易に理解できる。
日本人がグローバル史観を持つべく教育されていたら、三陸海岸に高さ15メートルもの無粋な防波堤を建てただろうか?

| 20.07.03

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