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ぬか床

最近、「ぬか漬け始めました」「私もやってます!」「ぬか床買ってきたばかり!」などと、SNSで密かなぬか漬けブームが起きている。家庭でできる“ぬか漬けセット”の売れ行きも好評だそうだ。
2019年8月にエスビー食品株式会社が行った「発酵食品に対するアンケート調査」で、20代から60代の“8割近く”が「ぬか漬けに関心がある」と答えている。特に若い20~30代の男女でぬか漬けをやっている人は、その78%が最近1年以内に始めたという。
しかもSNSで「#ぬか女(じょ)」などのハッシュタグを付けて投稿する「ぬか漬け女子」「ぬか漬け男子」が増えており、「ぬか床」を「ぬか子」と名付け、驚くなかれ「ぬか床」に話しかける女性も登場するほどだ。
「ぬか床」はきちんと世話すれば美味しいお漬物という形で自分に返ってくる。世話のしがいがあり、そうするうちに仕事の悩みからも解放されていく。疑似家族のようなものとして捉え、ペットのように「ぬか床」にハマってしまうらしい。
ところで一般的にぬか漬けは「植物性乳酸菌による発酵食品」と思われているが、実はそんな単純な食べ物ではないようだ。
「ぬか床」を毎日 “素手“でかき混ぜることが肝心で、それが棲みついた常在菌の働きを引き出すらしい。乳酸菌だけではなく、酵母や人間世界のカンジタ系細菌類など多種多様な微生物が素手から入り、混じる。一種の「発酵エコシステム」が完成していくことで、「ぬか床」による独特の風味が生成されていくようだ。
それ故に、毎日かき混ぜ続けた「ぬか床」が「家ごとのぬか漬けの味」を作り、300年以上も受け継がれた由緒正しいお宝として伝承されたりする。日本には多様なぬか漬け文化が現代まで生き延びている。
一方、この「毎日かき混ぜる」という行為こそが「ぬか床」表面の好気性発酵を封じ込めるだいじな儀式だそうで、これにより「ぬか床」は腐らなくなる。日本の食文化の中には、微生物と人間の微妙な “共生”の成功例が既に構築されている。
新型コロナウイルスは感染が収束しても地球上から無くなることはない。PCR検査を積極的にやらない日本の感染防止策は理論的ではないが、PCR検査を積極的にやったアメリカやヨーロッパ諸国が封じ込めに成功したわけでもない。だれ一人として腑に落ちていないのだ。
日本の曖昧な感染防止策の背景には、素手で「ぬか床」をかき混ぜて雑菌の中で漬物を作る「ぬか床」文化があるのかも知れない。
アメリカ人が「ぬか床」の正体を知ったら、多分気絶するだろう。

| 20.06.05

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