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名古屋飛ばし

4月7日に発令された“新型インフルエンザ等対策特別措置法”に基づく「緊急事態宣言」の対象地域にならなかったことで、逆に今、愛知県が注目を集めている。
愛知よりも感染者が少ない兵庫、埼玉、福岡が対象になり、なぜ愛知県が対象にならないのか、分かりづらい判断だ。“法に基づく”対象地域の選考基準として、直近の微分的陽性反応増加を重視し、積分的数値に優先させた?らしいが、腑におちる人は少なかっただろう。
ネット上では自虐の意味を含む「名古屋飛ばし」という言葉が飛び交い、トレンドワードに入ってしまった。
かつて、興行の入りが悪いが故に揶揄された「名古屋飛ばし」が、1992年の東海道新幹線最速の「のぞみ」運転開始時に、通勤時間帯に名古屋駅を通過するダイヤを組んだことで更なるインパクトを持つ。
名古屋市の人口200万人以上、愛知県は800万人に迫る大都市圏にも関わらず、依然として新幹線通過地域の印象が強い。
現在の愛知・名古屋の繁栄は、尾張徳川7代目徳川宗春が藩主の時代に始まる。宗春は反骨の君主で、吉宗の「享保デフレ」時代に幕府の方針であった緊縮財政に逆らい、独自に尾張藩の財政支出を拡大して名古屋繁栄の礎を築いたことで有名だ。「芸どころ」の「名古屋飛ばし」と皮肉られたこともあるが、ユニークな文化コンテンツに富む都市として栄えたとも言える。
内閣府が公表した平成27年度の「県民経済計算」の県内総生産(名目)では、東京都の約104兆3,391億円に次いで愛知県は約39兆5,593億円で堂々の2位。大阪府の約39兆1,069億円、神奈川県の約33兆9,187億円を上まわる。
県民所得の総額を見ても、東京都の約72兆6,887億円に対し、愛知県は約27兆5,182億円で神奈川県や大阪府とほぼ並び、1人当たり県民所得で見ると、東京都の約538万円に対して愛知県約368万円とこれも単独2位だ。大阪府約313万円神奈川県約299万円と、豊かさでは愛知県が際立っている。
この豊かさがトヨタを始めとする自動車産業に支えられていることは明快だが、AI利用の自動運転化や電気自動車など、名古屋は新しいIoT技術へのパラダイムシフトでも一歩先を行く先進都市として、将来の見通しも明るい。
緊急事態宣言の対象エリアに選ばれなかったのは、自力更生力有りとみなされたからか?2027年に開通するリニア新幹線を利用した首都機能移転構想をキッチリと策定できれば、「名古屋飛ばし」転じて「副首都名古屋」実現のチャンスかも。
コロナ禍が世界の“発展”の価値基準を変えつつある中、日本の将来にとって名古屋への期待は大きいのだが・・・

| 20.04.17

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