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エモ~い

日本全国約7000のインスタ映えスポットを掲載しているサイト「スナップレイス」は、2020年に流行が予想されるスポットとして“エモ~い”場所が注目されると発表した。
“エモい”とは「エモーショナル」から来た造語だが、「スナップレイス」が「笑い/感動/興奮/懐かしさ/恐怖/驚き」の6つの感覚で特徴づけたスポットには、まさに「この場所は“エモい”」という表現がふさわしい。
以前と比べインスタグラムのユーザー層に男性が増え、男女とも40~50代が増加していることから、より幅広い訴求力を持つ“感情を突き動かすシチュエーション”が求められているそうだ。
この“エモい”、実は過去に三省堂「新語2016」 でその年の新語第2位にも選ばれている。『三省堂国語辞典』編集委員で選考委員の飯間浩明氏は、“エモい”という言葉の使い方の源流は古語の“あはれ”の使い方に求められるとする。
吉田兼好は徒然草で、「かくてもあられけるよと“あはれ”に見るほどに」と、「しみじみと心打たれる」という意味で“あはれ”を感覚的に使い、更に遡って清少納言は枕草子で、「得たるはいとよし、得ずなりぬるこそいと“あはれ”なれ」と、「気の毒に思う」という意味で使っている。それぞれに複合的な意味を持つと言える。
こういう言葉の使い方をする感性は、現代の“エモい”のそれに通ずるものがあるというのだ。主に哀愁的で、どこか切ない感情を中間的に表現する便利な言葉ということだろう。
現代の“エモい”という言葉、「この歌詞エモい、文章がエモい、なんかエモい風景」・・・などと感覚的に使われているため、時として「どういう意味?」と戸惑うものもある。使う人により微妙に意味合いが違っているからである。
雑誌『CanCam』の16~39歳の女性に向けた調査によると、“エモい”はインターネット上では比較的使われているものの、年齢が上がるにつれ「わからない」派が増えるという。
使い方が「正しい、正しくない」ということを超えて、相手の心を感覚的に一気につかむスピードとパワーが重要なのだ。時代への“共感”を表す言葉として受けとめたい。
古語の“あはれ”や現代の“エモい”には、時空間を超えた共感力がある。
新しい表現として新しい言葉が生まれ、更に使いこなすことで、強い感情を言葉に込めることができる。
インスタグラムは単なる写真を超えて新しい共感ツールになり始めているのだろう。デジタルプラットフォームを駆け抜ける“一枚の言葉”として。

| 20.04.10

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