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無電柱化

電線の地中化に関しては、アジアで日本が台湾、韓国、インドネシアに学ばねばならない案件だろう。国土交通省の発表では2011-14年にかけて、台北95%、ソウル46%、ジャカルタ35%に対して、東京23区8%、大阪市6%と大差がついている。
地震大国であり学者からの警告が出ているにも関わらず、日本の驚くべき鈍感な部分だ。韓国は朝鮮戦争後の不況を乗り越え、1988年のオリンピック前後からわずか30年で、ソウル市の50%近い無電柱化を果たしたのだ。以下に主要な都市の現状を示す。
ロンドン     100%(2004年)
パリ       100%(2004年)
ハンブルグ   100%(2004年)
香港        95%(2004年)
台北        95%(2013年)
シンガポール   93%(1998年)
NYマンハッタン 83%(2016年)
ソウル       46%(2011年)
ジャカルタ     35%(2014年)
東京23区     8%(2013年)
大阪      6%(2013年)
( http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/content/000034971.pdf )
日本政府の無電柱化への不感症と電力会社の怠慢は、もう国家レベルでの犯罪に近い。ヨーロッパ各国のレポートを見ると、無電柱化は景観確保以上に、防災とメンテナンス、電力事業とガス事業の公平な競争の観点などから、都市インフラとして歴史的に重視されてきた部分だ。
イギリスは1882年に「電灯事業法(The Electric Lightning Act)」を制定し、地上もしくは上空に電線を設置することを禁止した。これによってガスと電気とが公平に競争できるようになったそうだ。無電柱化は景観保全のためだけではなく、あくまでも経済競争の公平さを保つことが発端だった。
日本はイギリスに遅れること140年近く、ようやく今年5月末に災害時の物資輸送時に重要となる道路を対象に、電力会社や通信会社に電柱を撤去させる新たな制度を設けると発表した。重要区間を指定して、10年間の猶予期間終了後は道路の利用許可を更新しないという。今から10年とは耳を疑うが、何もしないよりはマシということか。
それでも特に京都の洛中はひどく、2%と末期症状である。貧しかった東ヨーロッパの古都が殆ど無電柱化を果たしていることを考えると、日本人は「慣れ」という形で防災への問題意識を失ってしまっているのだろうか?
イギリスでは無電柱化を行うのはあくまでも電気事業者だ。日本の電気事業者は費用負担1/3と甘やかされていながら、これまで率先して推進することはなかった。
消費税の値上げは社会福祉に使われると政府はいうが、南海トラフ地震が数年以内に起こるかもしれないと言われている現在、最大の福祉は「防災・減災」ではないだろうか?
福祉事業の対象者(国民)が災害で死んでしまっては元も子もない。

| 19.09.06

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