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#KimOhNo

米国のタレント、キム・カーダシアン・ウェストが、日本の“着物”にインスパイアされたとして自身が監修する補正下着ブランドに「KIMONO」と銘打ち商標登録も申請したが、多くの反対にあって結局取り下げることになったようだ。
Twitterではブランド名をもじって反対を訴える「#KimOhNo」(https://twitter.com/hashtag/KimOhNo)というハッシュタグがワールドトレンド入り。アカウントには「名前を変えて」とブランドの名称変更を訴えるコメントが殺到、日本国内のみならずアメリカ国内、さらには海外からも批判の声が沸き上がった。
京都市の門川市長が再考を求める手紙を彼女に送り、ネットでは反対署名が10万人を超えるなど炎上した。結局、キムは自身のSNSで「慎重に考えた結果、下着ブランドを新しい名前で立ちあげることにした」と発表したが、内心では十分な炎上効果を得たと満足したのだろう。
日本人にとって“着物(KIMONO)” は本当に日本文化固有の名詞なのだろうか?アメリカでは一般名詞ゆえに商標登録出来なかったのではないか?という疑問だけが残った。
“着物”は日本の伝統的衣服の通称として使われているが、元々は言うまでもなく単なる“服”を意味することばだ。16世紀に日本へ来た西洋の人たちが着ていた衣服「洋服」に対して、従来の日本の衣服は「和服」とした。明治以降は海外で “着物(KIMONO)”というと、東アジア圏で見られる前合わせ式の服全般を指していたようだ。
日本でも「和服」を扱う店は「呉服屋」と呼んで、「着物屋」とは言わない。「呉服」の語源は、三国志で有名な3世紀の中国の“呉国”から織物や縫製が日本に伝わったことによるとされ、「呉服」は日本の古墳時代以降の移民の服全般を指していると思われる。
中国の時代劇を見ていると、漢時代の服も形が呉服によく似ている。「漢服」は後の「呉服」に影響を与え、7世紀以降の日本の支配層の服装が朝鮮半島を経た中国文化から大きな影響を受けたであろうことを示している。
養老三年(719年)には衣服令が発布され、『天下百姓ヲシテ襟ヲ右ニセシム』(服は皆衿を右前に着ること)と制定された。“和服”の姿が定まり、本年2019年は日本の着物文化が出来上がって1300年目の節目の年となるわけだ。
今回の騒動で、自国文化を自慢することはあってもそのルーツに対して関心の薄い日本人は、“着物”を見直すいい機会を得た。
お礼に、「#KimOhNo」を彼女の新しい下着ブランド名に薦めるぐらいの見識と余裕が欲しいものだ。

| 19.07.05

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