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ライフ・イズ・ビジネス

今年の1月、Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾスは、25年間連れ添ってきた妻マッケンジーとの離婚をTwitterで発表した。
ジェフ・ベゾスは、自らの保有するAmazon.com株(約16%)の4分の1を彼女に分与する離婚調停に合意し、その結果、彼女は約360億ドル(約4兆円)の財産を贈与税無しに手にすることになった。これは離婚に伴う財産分与としては、米国史上最高額になるようだ。
なぜ今このタイミングで離婚なのか?
GAFAの株価は、事業がグローバル化し過ぎたことへの反動で、各国でバッシングを受けて最近不安定になっていた。先行きは極めて不透明だ。そのような環境下では引退でもしない限り、創業者は自社株式を売却し財産を保全することはできない。
ジェフ・ベゾスにとってマッケンジーは妻でもあるが、Amazon.com成功の影の功労者だった。2人で築いた財産の最善の保全策は、皮肉にも「離婚による財産分与」という結論に至ったのだろう。自社株をピーク価格で処分するのに、これ以上の大義名分はない。その意味で、今回の離婚は正確に計算されて行われた?と言えそうだ。
2人は93年に結婚し、将来を嘱望された銀行家としてのマンハッタンでの裕福な生活を捨て、起業のためにワシントン州へ引っ越している。その時、車のハンドルを握っていたのがマッケンジーであり、ジェフ・ベゾスはAmazon.comの事業計画をこの車中で書いたと伝えられている。
「離婚でいくら得られるか?」といったメディアの興味本位の見出しを撥ね除け、マッケンジーは正当に自らを評価させ莫大な財産を手にした。ジェフ・ベゾスも彼女との信頼関係を保つ限り、彼女の財団を通じて永遠の名声を手に入れたと言える。
マッケンジーは、「The Giving Pledge」(https://givingpledge.org/)という、資産の半分以上を寄付するという富裕層の「寄付誓約宣言」に署名し、財産分与を受けた4兆円の半分を寄付するオブリゲーションを自らに課した。
しかし、財団基礎財産(2兆円)の2%(約400億円)は、理事長報酬を含む財団管理予算として、彼女が毎年その使途を采配するのだ。
残りの約2兆円は、プライベートエクイティとして再投資に回されるのだろうから、さらなる財産を築くことも可能だ。どこかの国の芸人とは考えているレベルが違う。
『星の王子さま』の著者サン・テグジュペリの名言曰く「愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、共に同じ未来を見つめること」、を地で行く2人だ。
成功する起業家にとって、離婚もまた「ライフ・イズ・ビジネス」ということなのだろう。

| 19.06.21

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