trendseye

技術書典

聞き慣れない言葉だが、IT業界で働くエンジニアやその卵たちが自ら作ったソフトウェアの情報交換や、プロダクトを展示即売するイベントを「技術書典」( https://techbookfest.org/ )と言う。
「技術書典」は、技術書の頒布を通じて新しい技術と出会い、互いに交流し研究する場だ。その内容の濃さと異様な熱気に包まれる会場の雰囲気は凄く、毎年開かれるようになり、昨年からは春と秋の2度開催されほど急速に大きく盛り上がってきている。
今年の春は4月14日に池袋サンシャインシティで行われ、参加者はほぼ同業者だが、一日で一万人以上来場したようだ。「技術書典にロケットランチャー撃ち込まれたら日本のゲーム業界は終わる!」という冗談も出たほどだったそうだ。
逆に言えば日本のITコンテンツクリエーターは1万人程の小さな閉じた集群なのだとも言える。しかし世界のグローバルIT企業群は、2016年以降急速に力をつけ、世界の時価総額ランキングの上位を独占、マイクロソフトとGAFAと言われるアメリカ企業がトップに並ぶ。2018年にはここに中国からテンセントとアリババが加わった。
2019年4月の発表では時価総額上位10社を米中のIT企業がほぼ独占し、それらが世界の時価総額全体の約10%弱を占める。片や日本企業は、45位にトヨタ自動車がやっと食い込んだだけだ。時価総額トップ10社に日本企業が8社入っていた1988年から隔世の感がある。平成の30年間で時代の潮目は明らかに日本から離れた。
「技術書典」の参加者が同業者だけで内向きに賑わっていると聞くと、正直違和感というか敗北感すら覚える。
追い打ちをかけるように、データ調査会社Sensortowerが、App Store における国民1人当たりの平均支出額(各国別課金総額を人口で割ったもの)は日本が世界的に突出していると報告している。
2017年App Storeでの日本人1人当たりの年間支出額は$214とダントツの1位だそうだ。2位オーストラリアの$114の約1.9倍、アメリカの約2.3倍だ。しかもこの90%がゲームに投じられている。課金系ソーシャルゲームコンテンツは既に欧米や中国では規制対象になっていることを忘れてはいけない。
IR法案通過時にあれだけアディクト(依存症)対策をうるさく言ってきた政治家たちは、日本政府が世界で規制されている課金型ゲームを野放しにし、貴重なIT技術者がグローバルマーケットに背を向けて課金型ゲームの開発に勤しむ姿を健全とみているのだろうか?
日本が世界で闘うグローバルカンパニーを生み出せない原因は、この辺にもありそうだ。

| 19.05.24

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.