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アドレスホッパー

「アドレスホッパー」という新しい暮らし方が、自由な仕事につく独身の若者達の間で話題になっている。
ひとつの住所という特定の拠点を持たずに国内外を移動しながら、Airbnbで見つけた部屋やシェアハウス、ホステル、ホテルなどで暮らし、オンライン環境のコワーキングスペースなどで仕事をする。“家”という概念に囚われずに、多拠点で生活をする新しいライフスタイルが日本に確実に生まれているようだ。
まず定住する家を持たないと、モノへの考え方が変わってくるそうだ。常時移動に備えて本当に大切なものしか持たず、家に費用をかけない分、大半の収入を移動費に充てる。毎日同じルートで通勤するという概念もなくなり、便利な場所でリモートワークすることが普通になる。仕事に対してもやらされている感がなくなり、精神的に解放されてクリエイティブな仕事が出来るように変わってくるという。
立川こしら著『その落語家、住所不定。 タンスはアマゾン、家のない生き方』(光文社新書) ( http://daipuro.com/book/ )には、「アドレスホッパー」たる生活が如何なるものかよく描かれている。
「アドレスホッパー」にとって、政府が進める地方創生は好環境だ。従来の移住者を求めるのではなく、定期的な滞在や仕事を通じて地域との縁を持つ人を増やそうとする自治体の制度は、彼らのライフスタイルに合致する。
秋田県大館市の「お試しサテライトオフィス」では往復の旅費やレンタカー代を市が半額補助し、1泊3000円の極安コテージにWi-Fiや家電製品、ビデオ通信機器などを完備し提供している。市内の温泉も100円で利用可能らしい。
さらに“不動産業界のアマゾン”と評される、インド発のホテル運営会社 OYO(オヨ)が上陸した。OYOはインドのほか、既にインドネシアや中国、イギリスなど世界8カ国で急成長。日本ではヤフーと共同で「OYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPAN (商標:OYO LIFE)」を設立して営業に入った。
敷金・礼金・仲介手数料は無料、3ヶ月単位の契約手続きはすべてスマホで完結する。不動産屋に出向くことはおろか、紙での書類のやり取りも一切なし。気軽な住み替え需要を掘り起こし、自分のライフスタイルに合わせて住居を転々とする「アドレスホッパー」にピッタリだ。
「アドレスホッパー」は、固定費の代表ともいえる家賃や住宅ローンを変動費にしてしまうというコペルニクス的価値転換を起こそうとしているのか。
「アドレスホッパー」の増殖は自由な住み方を提起するだけでなく、都心の昼間人口と夜間人口を均等に近づける。それがストレスフリーな日本の新しい生活様式として認知される日も近そうだ。

| 19.04.05

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