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CD的劣化

最近、永遠に劣化しないと思われていたCDに剥離が始まったと悲鳴のツイートが相次いでいる。( https://www.excite.co.jp/news/article/Radiolife_30282/ )
CDとはdigital optical disc data storage のことだ。レコードに代わる音楽ソースとしてフィリップスとソニーで共同開発され、世界に先駆けて1982年の10月1日に日本でリリース、翌年1983年には欧米でも発売された。
当初は音楽専用CD-Rとして発売され、その後他のデータも書き込めるCD-ROMとして発展していくことになる。日本のデジタルテクノロジーが世界標準となり世界を制覇するのではないかと思われた、時代を象徴するプロダクトだった。
CDは1986年には日本でアナログレコードの売り上げを上回り、一世を風靡した。デジタル信仰真っ只中、CDの寿命は半永久的とまで言われ、レコードより寿命が短いなどと思う人は誰一人いなかった。
しかし当初から「CDの物理的寿命はアルミの蒸着膜が腐食し始める30年が限界」という噂があり、いままさにその30年が過ぎようとしているのだ。裏面を傷つけてはいけないと知っていても、ラベルの貼ってある表面も大事だということを知らない人は意外に多い。
かつてレコードに代わる記録媒体としてカセットテープが出現、ソニーの「ウォ-クマン」は“音の携帯”を可能にする画期的な存在の登場であった。その後デジタル化され、MDやフラッシュメモリーで小型化・軽量化が進み、容量も飛躍的に増大、音楽や映画の楽しみ方はその携帯性によって大いに進歩することとなった。価格も下がったが、インターネットの登場により全ての情報環境が劇的に変わっていくことになる。
そうしたデジタル化の嵐の中、肝心の“音質”はどうなったのだろう?アナログレコードやカセットテープより音域が狭くなり音の深みも失われたことはあまり知られていない。デジタルへと変革を遂げる途中で、「感性?」を失ってきているのだ。
日本がCDで世界のデジタル化に先鞭をつけたことは評価できるが、その過程で“音質”以外にも大切な何かを失っているかもしれない。グローバルネットワーク社会というパンドラの箱を開ける時、それを支配する強固な意志力と壮大な想像力を持ち合わせていなければ、ただ使い捨てにされる運命だ。
日本発の次世代産業イノベーションがもしあるとすれば、CDのようにたった30年で劣化してしまうものでは問題だ。ネットワーク化に対応した、数字に表れない「感性」が次の開発のテーマだろう。

| 19.03.22

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