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モーター音

スウェーデン、デンマークを始めとする北欧各国は、2030年までにエンジン車の販売を終了し、2035年にはハイブリッド車も廃止すると発表している。
VOLVOは2019年中にはガソリン車の製造を全て終了して、EVとハイブリッド車のみに完全シフトすると宣言した。
これに続いてドイツ、オランダ、フランスでも「2025年から2040年にかけてエンジン車及びハイブリッド車の販売禁止を求める法案」が順次可決されていく見通しだ。
アジアでも深刻な大気汚染を背景に、中国とインドを中心にEVの普及が急速に進んでいる。中国は今やEVの世界累計販売台数約200万台のうち65万台以上を占める“世界一のEV大国”だ。インドも2030年までに国内販売の自動車をすべてEV化する、と拮抗している。
中国、インド、欧州のEV化で、概ね2030年を境に車の「エンジン音」は世界で「絶滅!」する趨勢である。一方「モーター音」の創造が、バカにならない価値を持ってきそうだ。
そんな中1月14日に始まったデトロイトの北米自動車ショーでは、EV化を背景に参加した欧州メーカーはVWだけだったようだ。米国はビッグ3が時代に逆行した大型SUVを発表、トヨタはスープラを17年ぶりに復活させ、豊田社長自らガソリンエンジン車の音にこだわったスポーツカーの発表にはしゃいでいた。自動車産業の大きな転換点にあって、リーディングカンパニーのトップとは思えない時代錯誤なメッセージが気になる。
それに先駆けて1月11日までラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、驚くべきことに老舗ハーレーダビッドソンが電動バイク「LiveWire」を初出展し参加者を驚かせた。電動バイクはもはやIT家電だというメッセージだ。
「LiveWire」は、なんと電動ながらも完全な無音ではない。ハーレーは新たな「モーター音」をつくり、走行している速度がライダーや周囲の人々にも伝わるようにしているのだ。高揚感のある実に良い音を創っている(https://youtu.be/exUDbWXi4Do )。
ほんの数年前までは、「エンジン音」へのこだわりを売り物にしていた超高級車フェラーリやランボルギーニ、アストンマーチンの12気筒エンジン独特の高音が賞賛され、「フェラーリサウンド」と形容されたりした。
しかし、時代はあっという間に車に「モーター音」を求め始めたようだ。日本の自動車産業も世界に先駆けて構造破壊を行わないと、次世代、米国ビッグ3に抱きつかれたまま中国製EVに葬り去られてしまう、という事態が起きない保証は全くない。

| 19.01.18

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