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どろろ

60年代半ば、水木しげるの妖怪マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」のヒットをきっかけに、マンガ界ににわかに妖怪ブームがまき起こった。
「鉄腕アトム」など多くの名作を手掛けた漫画家手塚治虫も、この水木しげるの人気作への対抗心から、妖怪マンガ「どろろ」の連載を始めたと言われている。
「どろろ」は戦国時代を舞台に妖怪に手足など体の多くを奪われた若者・百鬼丸が、「どろろ」と名乗る子供と各地をめぐる物語だ。父の野望のために、生まれる前から48匹の妖怪に体の48箇所を奪われて育った百鬼丸。
自分の体を取り戻すために妖怪を倒す旅にでるが、その途中で百鬼丸の刀を狙う子ども「どろろ」と出会い、奇妙な縁で一緒に旅をすることになる。そして冒険の途中で、妖怪に奪われた自分の身体48箇所を使って作られたのが実は「どろろ」だということを知る。「どろろ」1人を殺せばすべての身体を取り戻せるが、既に百鬼丸は「どろろ」を殺せなくなっていて苦悩する。
原作の連載から50年を経て、「どろろ」( https://dororo-anime.com/ )は新作テレビアニメ(TOKYOMX、アマゾンプライムビデオなど)として1月から放送、全く古さを感じさせない手塚作品の魅力で大いに話題を集めているようだ。
妖怪とは人間の理解を超える奇怪で異常な現象、或いはそれらを起こす不可思議な力を持つ非科学的な存在だ。日本には千年以上も前からさまざまな妖怪の絵を描き、それを通じて人間たちの世相を風刺・滑稽化してきた歴史がある。妖怪はコミックやアニメ、小説、ゲームなどに欠かせない存在でもある。
一方、人工知能「Alexa」を搭載したアマゾンのAIスピーカー「Amazon Echo」が突然笑い出すというトラブルが話題になっている。ネット上で「夜中に笑い声が響く」といった不具合の報告が複数あり、中には突然近くにある葬儀場や墓地のリストアップを始めたという怪異な動向もあるそうだ。
ユーザーからは恐怖に怯えたという声も聞かれ、単なる誤動作だとしても、現代の妖怪?とも思わせる。AIは暮らしを効率化する目的で人間が「発明」したものだが、時として現代の妖怪が憑依するようだ。
手塚治虫がAIの予兆を感じとっていたとは思えないが、我々は現代の百鬼丸、AIは「どろろ」だとも言える。人はその身体機能を便利なAIに次第に奪い取られてAI無しでは生きられなくなり、AIに癒されながら人生を終わっていく運命のようだ。
AIは「どろろ」に似て、本当は恐ろしい存在だ。

| 19.03.01

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