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バーチャル・インフルエンサー

ソーシャルメディア上で大きな影響力を持つ「インフルエンサー」は、今や企業のマーケティング活動に欠かせない存在だが、実在しないものがある。
「バーチャル・インフルエンサー」として最も有名な存在の1人が、Miquela Sousa
( https://www.instagram.com/lilmiquela/?hl=ja )という19歳?の女性だ。
コンピューターグラフィックス(CG)でつくられた3Dキャラクターは1998年生まれでカリフォルニア在住、スペイン系ブラジル人のミュージシャンというプロフィール設定。
2016年にLAの企業がインスタグラムに登場させ、現在フォロワー数は160万人以上だという。ツイッターやフェイスブックのアカウントを持ち、ソーシャルメディア上では「Lil Miquela」と称する強力なインフルエンサーだ。
彼女はシャネルやシュプリームなどのファッションを身にまとい、実在するセレブと一緒に写った写真をアップするなど、他のインスタグラマーたちと同じような行動でファンを楽しませている。
2018年にその正体が明かされるまで、多くのファンは彼女を生身の19歳だと思っていた。しかし実際は多くのフォロワーから「いいね」を集めるように設計されたAIフェイク(アバター)だったのだ。彼女を作成した人物は未だ明らかになっておらず、謎めいた部分が注目を集める理由にもなっている。
ブランド側にはこうしたアバターと働きたがる傾向がある。時間をかけて写真テイクする必要がなく、コンピュータ上で1から理想のブランドアンバサダーを作ることができる。企業の広告塔としては便利で完璧だ。
さらに現在は、すでに亡くなってしまった過去の有名人がデジタル上で蘇り、デジタル・インフルエンサーとして振る舞うことも可能になったそうだ。
「バーチャルヒューマン」研究の第一人者、ジュネーブ大学のナディア・マグネナット・テール教授によると、既に3Dスキャンなしで過去の映像からバーチャルヒューマンをつくりだせるらしい。
ハリウッド映画『Fast and Furious 7』では制作中に俳優ポール・ウォルカー氏が亡くなってしまったが、彼のバーチャルアクターを使って残りのシーンを撮り、映画は無事完成している。
広告における「バーチャル・インフルエンサー」の起用は広まる一方だが、「広告における真実」という観点から疑問の声も起こっている。しかし実在するインフルエンサーたちも、所詮真実のみを発信しているわけではないとの反論には説得力がある。
自分のアバターがソーシャルメディア上で「不老不死」になり死後も永遠に進化し続ける時代が、すぐそこまで来ているのだろうか。

| 19.08.02

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