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大坂なおみ

2018年1月の全豪オープンで、「今取り組んでいるのは、ポジティブな姿勢をどんな時にも維持することだ」と大坂なおみ選手はそう述べて、完璧主義・ネガティブ思考からの脱却を目指していることを明らかにしてくれた。それから8ヶ月・・・メンタル面での劇的な成長を実現させ、全米オープンで見事優勝を成し遂げた。
米国の一流大学で今世紀に入って、「ポジティブ心理学」の人気が非常に高まっているようだ。ハーバード大では2006年の「ポジティブ心理学」の講義に約900名の学生が殺到し、イェール大でも2018年に開講された同様の講義が、316年の同大史上最多となる約1200名の受講者を集めたという。多くの生徒が高校時代に自分の幸せより大学受験を優先した結果、在学中にメンタルヘルスの問題を訴える傾向が一流大学ほど高いらしい。「ポジティブ心理学」の授業に高い関心が集まることは当然の帰結のようだ。
「深く考えることはありません。私は私としか思っていない。育てられた通りにやっています。」これは帰国直後の記者会見で、「アイデンティティーをどう受け止めているか?」と質問されたのに対する大坂なおみ選手の答えだ。「私は私」という言葉が印象的だが、ここでもメンタル面での成長ぶりを感じさせた。
ニューヨークタイムズ紙が8月に彼女を大きく特集した記事( https://www.nytimes.com/2018/08/23/magazine/naomi-osakas-breakthrough-game.html )で、日本と米国とハイチ、三つの文化にルーツを持つことについて彼女は、「多分、みんな私が何者なのかはっきりと言い表せないから、誰もが私を応援してくれるんじゃないかしら」と超ポジティブに答えている。
「多文化なルーツを持つがゆえに世界中により多くのファンを得られていることに彼女自身は気付いている」と同紙は書いている。
スポーツの世界ほど国籍の扱いが多様な分野はない。国籍と人種アイデンティティーが同一とは限らないからだ。日米の二重国籍で日本にルーツを持つというアイデンティティーを保ち続けることはあるのだ。日本は、容姿や言語、しぐさや性格だけで「日本人ではない」とか「日本人らしい」と言ったりすることがある。普段は差別対象としながら都合のいい時だけ“ハーフ”でも日本人として受け入れようとする。これは正に“日本に根付く多様性を否定する考え”の表れだ。
アイデンティティーをしっかり持つことが出来れば国籍は選べば良いのだ、ということを、一人のトップアスリート大坂なおみが既存の日本人?に教えたようだ。

| 18.09.21

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