trendseye

現金!

福岡市の繁華街で、銀行からおろしたばかりの現金3億8,400万円が奪われる事件が起きた。その事件の直後に、今度は7億円超の現金が福岡空港から運び出されようとしたのも見つかるなど、これほどの現金を持ち歩く人が未だにいるという日本の“現金依存度の高さ”に驚く。世界的には脱税やマネーロンダリングを支えているとして現金決済が減少する傾向にあり、米国をはじめ複数の国で段階的に紙幣を廃止してはどうかと提案する経済学者もいるほどだ。振り込め詐欺が後を絶たないなど日本の現金依存度の高さは世界でも突出している。
国際決済銀行(BIS)の2015年の統計リポートによると、日本国内で流通する現金の名目GDPに対する比率は19.4%と、世界の主要国の中でトップだ。最も低いのはキャッシュレス化が進むスウェーデンで1.7%、日本の10分の1以下だ。英国3.7%、米国7.9%と比べても日本の現金決済比率が高いことがわかる。世界的に電子マネーや仮想通貨といった新たな決済手段が広がりつつある中、日本は決済システムで大きく遅れた。
例えば欧米ではクレジットカードや現金を押さえて、決済コストの低いデビットカードの利用がトップだが、日本ではその最大のメリットと言える小売店でのキャッシュアウト利用が今年4月にやっと解禁されたばかりで、普及で米国に20年は遅れを取っている。
ヨーロッパは世界規模の金融危機に備えて「通貨のデジタル化」を急いでいると言われる。スウェーデン、デンマーク、スイスは、EU、日本に先駆けてマイナス金利を導入し、中でもスウェーデンは電子決済比率が90%台と、キャッシュレス化のスピードで世界をリードする。ノルウェー政府も、2020年までにキャッシュレス・エコノミーに移行すると宣言した。既にヨーロッパでは現金での出入金を停止する銀行もあらわれており、キャッシュレス化へ大きく舵が切られているのだ。
日本のタクシーは現金決済がほとんどで、先進国で最も支払いに時間がかかると言われている。メガバンクのATMも、セブン銀行にグローバルATM化で先を越された。いくらオリンピックや万博を誘致しようが、IR法案を通そうが、決済コストを意識しない日本経済に世界経済をリードするチャンスは、今やほぼなくなったと言っていいだろう。
世界一偽札作りが難しいとされる芸術品のような日本の紙幣は、その精巧さ故にそのうち世界遺産になってしまうのだろうか?

| 17.04.28

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.