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ガラスの天井

ヒラリー・クリントンは、米国初の女性大統領という“ガラスの天井”を遂に破ることができなかった。なぜなのだろうか?
来年6月公開予定のDCコミックスを原作とする映画、『ワンダーウーマン』の予告編が注目されている。今年3月に公開された『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に登場したアマゾン族の王女、ワンダーウーマンことダイアナ・プリンスのオリジンを描いた作品だ。愛らしい彼女がブレスレットで銃弾を弾き返し、しなやかな体捌きで並み居る敵を倒していく。第一次世界大戦中の人間界にやってきた彼女が、争いを終わらせるために可憐に闘う姿が存分に描かれている。メガホンを取るのは、女性監督のパティ・ジェンキンスだ。『TIME』誌によると、過去10年間で50を超えるスーパーヒーロー映画がつくられてきたが、これまで女性監督がメジャー作品のメガホンを取ったことはなく、女性の強さを知り尽くして作られた作品だと言われている。
女性の活躍が当たり前になった男女平等社会で、女性ヒーローが登場する時は、男まさりの能力に加えて女性だけが持つ可憐さが無いと、男性のみならず女性にも受けないというデータがある。
東京都知事になった小池百合子をはじめ、世界で女性のリーダーは、時々弱さを見せる。ドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリス首相のテリーザ・メイ、台湾初女性総統の蔡英文、そしてミャンマーのアウン・サン・スー・チーや韓国の朴槿恵、タイのインラック前首相、遡ってインドのガンジー首相なども女性ヒーローのはしりだ。皆、どこかで弱さと女性らしさを演出している。それで失敗する場合もあるが?
今回の大統領選のヒラリー敗北の原因を裏から読むと、この弱さと愛らしさを演出せず、完璧な能力だけでガチに男と戦うことで、“ガラスの天井”が遠のいてしまったとは言えないだろうか。
超大国米国で初の女性大統領と期待されていたヒラリーは、「私はクッキーを家で焼くような女ではない」と宣言してしまった。もし「私はこう見えてクッキーを焼くのよ」と言っていたら、かなり票は動いた?だろう。トランプはディベートで、ヒラリーを「Nasty Woman」と嫌悪感を込めた一言で切り捨てた。誤解を恐れず言うと、「Nasty Woman」は女性からも嫌われる女性ということだ。
選挙中は「私は夫のビルより優秀なのよ!」という気持ちが言葉・態度の端々に見えていたが、敗北宣言をしている時のヒラリーは、肩の力が抜けて好感度が高かった。女性は完璧な女性が嫌いとは、正に皮肉な結果だ。

| 16.11.11

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