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シベリア鉄道

2016年10月はシベリア鉄道完成100周年の年だそうだ。ロシアのプーチン大統領は、日本の北海道新幹線を延伸し、サハリン経由でシベリア鉄道とつなぐ投資を日本にするよう求めてきた。北方領土の返還交渉におけるカードとして、ロシアの要求をどうとらえるべきなのだろうか?
「シベリア鉄道の北海道新幹線への接続」構想は、ユジノサハリンスクと北海道・稚内の宗谷岬をつなぐ海峡横断鉄道(約42km)の建設がキーだ。海峡は橋かトンネルで渡し、実現すれば東京からベルリン、パリ、ロンドンまでを陸路で結ぶ、戦前にはあった夢の鉄道ルートの再現となる。しかし、その投資額は膨大だ。
「シベリア鉄道」というと、朝鮮半島が日本に属し日本が満州国を支配していた戦前は、日本から欧州へ向かう様々なルートが知られていた。旧国鉄の下関駅から船で朝鮮半島に渡りシベリア鉄道に接続するルートや、門司から大連に渡り、満州鉄道ハルピン経由でシベリア鉄道に接続するルートなど複数存在したようだ。したがって戦前は、国内の国鉄主要駅からパリ行きの切符が買えたというから愉快だ。林芙美子著『林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里』にも、シベリア鉄道の列車や途中の都市の様子が詳しく書かれている。
今回のロシアの提案は、両国の経済・物流・観光・人的交流への期待もあり、極東経済には大きなインパクトがあることは自明だ。1970~80年代は、シベリア鉄道モスクワ-ウラジオストック間9297kmの貨物利用はほぼ100%日本企業が占有し、シベリアを横断して欧州と結ぶ輸送の大動脈が稼働していた。しかし、現在のシベリア鉄道にゴールデンイーグル(http://www.goldeneagleluxurytrains.com/trains/golden-eagle/)という豪華列車が存在していることはあまり知られていない。欧米の富裕層向けに15日間かける豪華な鉄道旅行の料金は、一人当たり約US$16, 000~31,000と非常に高額だが人気は高いそうだ。これが北海道に接続され東京まで来るとなれば、大変な人気になることは間違いないだろう。
多極化が進む世界情勢を鑑みれば、平和友好条件締結を含むロシアとの関係強化は時代の流れだ。日本の安全保障は現在米国一辺倒で成立しているが、ロシア、中国との距離を縮めていかなければ明らかに日本経済の将来はない。トランプ、ヒラリーのどちらが米国大統領になろうとも、米国の凋落はだれの目にも明らかだ。
日本国民は一方的4島返還要求ばかりするのではなく、自立した安全保障政策、インパクトある中長期の極東開発投資のリスクを取る時代が近づいていることを、プーチンの提案から認識すべきだろう。

| 16.10.21

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