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重国籍

民進党代表に選出された(村田)蓮舫氏が父親から受け継いだ台湾の「国籍」も所有する二重国籍の可能性があると問題視されたことは、日本人の国籍観が、欧米諸国、アジア諸国、特に華僑やユダヤ系ビジネスマンがリードする世界と比べ、如何にあやふやかの象徴だろう。
そもそも台湾を国として認めていないという点はさて置き、日本の国籍法(http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html)では二重国籍を認めていない。二重国籍になった場合は、一定期間内にどちらかの国籍を選択しなければならない。自ら志望して外国籍を取得した場合は日本国籍を喪失すると決められている。がしかし、二重国籍は罰則が曖昧なため年々増加の一途をたどり、推定で40万~50万人いると言われている。
2014年に青色LED開発などでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、ノーベル賞のプロフィールに"American Citizen" (アメリカ人) と紹介され、「中村氏はアメリカ人なのか、日本人なのか」と話題になったことがあった。中村氏は「研究の予算を得る必要などから米国籍を取得したが日本国籍を捨てたわけではない」と説明し、自身はまだ日本国籍を持っているという認識だった。安倍首相(政府)も国籍法を知りながら、中村氏を日本人として22人目のノーベル賞受賞者と認める(認めたい)発言をしていた。ところが、在アメリカ合衆国日本国大使館のサイトでは「自己の志望(帰化申請)により米国市民権を取得した者は、米国市民権を取得した時点で日本国籍を喪失したことになる」と、つまり中村氏は日本国籍を保持していないと説明している。
(村田)蓮舫氏の場合はその逆で、日本国籍取得後台湾での手続きが滞っていた為の二重国籍状態だったと予想される。生地主義を取る国での出産や、国際結婚の増加で、喪失届も国籍の選択も自らの届け出でなされる限り、多重国籍者の数は今後も増加すると考えられる。日本の国籍唯一の原則は揺らいでいる。
「国籍唯一の原則」は、1930年のヨーロッパ国籍条約に倣ったものとされている。しかし、ヨーロッパでは1997年に「自国民が婚姻により当然に外国籍を取得した」場合は、「権利として当然に多重国籍を容認」するとのヨーロッパ国籍条約が採択された。日本の「国籍唯一の原則」は風前の灯なのだ。
罰則は無いものの、国のリーダーになろうとする政治家は特に気をつけなければならない。アメリカですら大統領になる為にはアメリカ国籍だけでは不十分で、アメリカ生まれ、もしくは両親がアメリカ人であることを法律で求めているのだ。

| 16.09.23

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