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女人禁制

ユネスコの世界文化遺産登録を目指す2017年日本の候補として、文化庁文化審議会は福岡県の古代遺跡「宗像・沖ノ島と関連遺産郡」(http://www.okinoshima-heritage.jp/)を選定した。
玄界灘に浮かぶ沖ノ島は、朝鮮半島製の金製指輪や中東のペルシャからもたらされたカットグラスの破片など約8万点の出土品が国宝に指定され、「海の正倉院」とも呼ばれており、天皇家のルーツを知る重要な文化遺産でもある。住人はおらず、宗像大社の神職だけが島に入ることを許されている。年1回に限り一般人も上陸が認められているが、女性が立ち入ることは有史以来禁じられており、「女人禁制」の風習が残る島として有名である。
宗像大社は「女人禁制は古来守り続けてきたもので変えられない」としているが、世界遺産登録の障害になる可能性もあると見られている。
因みに、1988年に世界遺産に指定されたギリシャ北部にあるアトス山はギリシャ正教最大の聖地であり、600年以上にわたる女人禁制の地でもある。
ところで、2020年東京五輪のゴルフ会場になった霞ケ関カンツリー倶楽部が正会員を男性に限定していることについて、国際オリンピック委員会(IOC)から性別を含めあらゆる差別を禁じた五輪憲章に抵触するとして改善要求が出され、話題になっている。
実は霞ヶ関CCだけでなく、世界の名門と言われる会員制ゴルフクラブの中には、女性に差別的であるばかりか、“正会員は特定国籍保有者のみ”という「国籍条項」まで設けているところすらある。しかし、それらが許されて来たのは、プライベートな会員制クラブだからであり、そういう生い立ちのクラブを、差別を無くすことをモットーとする近代オリンピックの競技会場に選んだこと自体が問題だろう。そんな心配のないパブリックコースが日本にはいくつもあったはずだ。
一方、男女差別を無くすという理由で規約変更を考える名門ゴルフクラブもある。スコットランドのミュアフィールドCCは、「女人禁制」を固守してメジャー大会であるジオープン開催巡回地から外された為、近く会員の再投票を行ない、女性への門戸開放の可否を測る見通しだ。また、マスターズ・トーナメントを開催する米国の超閉鎖的な名門オーガスタナショナルゴルフクラブは、2012年に80年余りにわたって続いた「女人禁制」に幕を下ろしている。
そもそも古代オリンピック自体が「女人禁制」だった事を忘れてはいけない。すべては時代とともに平等になればいいというのではなく、その持てる文化性が決め手になるべきだろう。

| 17.02.10

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