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PEACE AND LOVE

英国の国民投票は大方の予想を裏切って「EU離脱」を選んだ。報道の混乱の中、2015年末にスタートしたばかりの東南アジア10カ国による緩やかな経済圏の構築を目指すAEC (ASEAN Economic Community )にも危機感が走った。
AECは昨年大晦日に10カ国が連合し、域内人口約6億3千万人で発足。スローガンは参加する国名のアルファベットから“PEACE AND LOVE”と掲げられた。PHILIPPINE「P」、SINGAPORE「E」、MYANMAR「A」、CAMBODIA「C」、INDONESIA「E」、THAILAND「AND」、MALASIA「L」、LAOS「O」、VIETNAM「V」、BRUNEI「E」 といった具合だ。ちょっとこじ付けだが?!
アジア版EUと言われて注目されているAEC(http://asean.org/asean-economic-community/)だが、 EUとの最大の違いはまずユーロのような単一通貨を持たず、ECB(欧州中央銀行)のように金融政策を統括する中央銀行もないこと。しかし、域内の関税は次第に撤廃され、ビザなしで人の移動も労働も自由化されていく予定だ。ある意味では人口6億3千万人のもう一つのUSA(ユナイテッド・ステイツ・オブ・アジア)の誕生だ。
一方EUは、米国に対抗しうる人口5億820万人の唯一の経済連合としてギリシャ危機も乗り越え落ちつくかとおもわれたが、英国のEU離脱があっさり決まってしまった。EUのGDPの約2割を占める英国では、イタリア・スペインなどの大国の隠れ債務に対する反感が広がり、ドイツ国民にもこれ以上貧しい国を支えられないという反EU感情があるようだ。
ドイツ経済はハプスブルク家の繁栄がもたらしたその底力で、第一次世界大戦、第二次世界大戦に敗戦しながらも更なる発展をとげ、今やEUを経済面から支えている。英国は植民地支配と産業革命で築いた富で、ロスチャイルド家に代表されるユダヤマネーが世界の金融を牛耳ってきたが、新大陸の英連邦諸国やタックスヘイブンに持ち出されてしまい、すっからかんになりつつある。英国の経済的凋落がEU離脱の背景に横たわる。
東南アジア諸国は、高度に統合され単一市場の形成がなされたEU (欧州連合)に比べて、域内市場自由化の足並みが揃わず、実情は単一市場形成どころか多くの分野で未だにバラバラな状態だとされる。しかしGDPの高い伸びを見せる若い「搾取され続けた国々の連合」が、「搾取し続けた国々の連合」を経済力で凌駕する時が来るかもしれないという期待感は、実に痛快である。

| 16.07.01

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