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おそ松さん

5月18日号『an・an』は表紙が「おそ松さん」で話題になり、売り切れ続出となった。
「おそ松さん」(http://osomatsusan.com/)は2015年10月から2016年3月、テレビ東京他で放送された深夜アニメ。イヤミの「シェー」などで有名な昭和の名作ギャグマンガ「おそ松くん」が原作であり、亡き赤塚不二夫の生誕80周年を記念し、「おそ松くん」たちのその後の成長を描いたTVアニメだ。
夜中の1時過ぎに放映されたにもかかわらず、女性達を中心に人気を集め社会現象を引き起こすまでになっている。番組が終了した今でも「おそ松さん」の人気は冷めることを知らず、an・anの表紙にまでなったのだ。何故なのだろうか?
「おそ松くん」における6つ子は、ひとりひとりの区別がつかない無個性な集団として描かれていた。しかし「おそ松さん」では、まとめてワンセットだった6人をあえて差別化し個別のキャラクターとして仕立て直した。成人した6つ子男子は全員「無職で童貞」と一見若い女性がそっぽを向くような設定だが、それが現代日本の「リアリティのあるファンタジー」として描かれている。赤塚不二夫のギャグイズムを見事に受け継いだ笑いではあるが、現代日本への警鐘ともなる内容だ。
閉塞感に悩む「最底辺」での若者の格闘が立場を超えて多くの視聴者の共感を呼び、むしろ「受け入れやすさ」や「親しみやすさ」という効果をもたらしたのだろうか?声優陣が人気イケメン揃いだったことが、腐女子オタク女性や乙女ゲーム好き夢女子たちにまず見るアニメとして選ばせることに奏効したのか?
株式会社日本リサーチセンターが行った『第6回世界価値観調査』(http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp)によると、未婚率が上昇している日本において、未婚男性の「不幸」感は諸外国と比較して抜群に高いらしい。「結婚がわずらわしい」という意識と同時に、「結婚したくてもできない」という非自発的な要素も大きいようだ。6つ子たちもアニメの中で「働きたくない」「養ってほしい」「このまま親のスネをかじって暮らしたい」と臆面もなく語る。「おそ松さん」は現代社会を大いに皮肉るギャグ漫画だから笑えるが、現実は笑えない悲惨な状況である。
政府は女性の働く環境改善ばかりに目を向けて少子化担当相は女性にしているが、子作りは共同作業、男性若者社会が抱える底なしの闇を無視してはいけない。猟奇殺人事件大国の日本は、米国の銃社会と同じく深い闇を持っていると考えた方が良いのではないだろうか?

| 16.06.17

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