trendseye

昆虫プロテイン

コオロギ粉末を使用したプロテインバーの米国メーカーExo社(https://www.exoprotein.com/)が400万ドルの資金を調達したと3月に発表された。我々が気づかないうちに、次第に昆虫からのプロテインパウダーの摂取が増えているらしい。
近年コオロギやハチといった昆虫が将来の食糧源として世界的な関心を集める中、国連食糧農業機関(FAO)も2013年に、食料問題の切り札として昆虫食についての報告書を発表している。これによると世界の人口は2030年には90億人に達することもあり得るとされており、このまま食糧増産が進んでもまだ5億人を超える人々が食糧不足に悩まされると推定されている。
その一方で森林減少による温暖化など、環境問題、農業問題がさらに深刻になることも避けられない。そこで高タンパクで、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれるなど栄養価の高い昆虫が着目されて来た。野生で捕獲するもよし、養殖するにしても牛や豚などの家畜動物より小規模な土地で育てることができるため、環境への負荷が低い。現在でも1900種以上の昆虫が伝統的に食されており、20億人の食生活の一部になってはいるものの、世界のより広い範囲で食材としてさらに利用されるべきだとFAOの報告書は示しているのだろう。
Exo社のみならす、欧米では食用昆虫の普及を目指す動きが活発化してきた。すでにベルギーなどがEU初の「昆虫食認可」の条例を発効している。美食の国フランスでは農家がコオロギなどの養殖と流通に向けて、国への働きかけが起きており、これに呼応するように昆虫食番組も増えているそうだ。イギリス、オランダやドイツなどでは国内販売が黙認されている。コオロギなどの食用昆虫は、間もなくEU圏内での販売が認められる食材「ヌーベルフード」のリストに登録されるだろう。これは大きな前進だ。
考えてみると日本は昔から昆虫の種類が多い昆虫大国で、古くより昆虫食の文化も根付いていた。各地方でイナゴや蜂の子、蚕さなぎ、セミなどが伝統食として食べられ、国内で55種の昆虫が食されていた時もあった。イナゴの佃煮は国民食として成人の50%が食べていたとのデータもあるくらいだ。
害虫駆除が一変して養殖に、生産者である農家の昆虫食への関心の高まりも凄い。気がついたら人間のタンパク質必要摂取量の大半を昆虫プロテインが賄っていた、という日も近いのだろう。

| 16.03.18

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.