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Workcation

米国で「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を合わせた「Workcation(ワーケーション)」と呼ばれる働きかたを認める会社が増えている。これは、社員が休暇中に旅行滞在先などから仕事をすることを認めるというもので、この期間はれっきとした勤務日として給与が支払われる。主に勤務の時間や場所の融通が利きやすいIT系の企業で取り入れられている。これまでも在宅勤務やリモートオフィスという考えはあったが、更にその自由度を増したものだ。
今年発表された米国人の休暇に関しての調査 Skiftの「travel habits of Americans」(http://skift.com/2015/01/05/travel-habits-of-americans-41-percent-didnt-take-any-vacation-days-in-2014/#)によると、米国企業は「Vacation(休暇)」の定義が曖昧になる中で、「Workcation」をソリューションとして新たな働きかたを提案しているという。
企業の休暇に対する考えが変われば、当然社員の働き方も変わってくる。例えばオーストラリア人旅行者は、北海道にスキーに来ると最低1ヶ月は滞在するというデータがある。タイ・プーケット島に来るスウェーデン人、ロシア人、英国人も滞在は平均1ヶ月を超える。避寒に来るから1週間で帰る気はない、世界の休暇の取り方は既に大きく変わっているのだ。これからは「Workcation」に対応していないと、そうした長期滞在インバウンド観光客を失うことになるのだろう。日本的統計的ものの見方では分かりづらいが、先進国の休暇はもはや旅行ではなく「ミニ移住」と捉えるのが正しいのだろう。ホテル業界で、複数のベッドルームやリビングを備えたビラ型ホテル、コンドミニアムホテルなど、レジデンス仕様のブランドが世界的に増加している背景には、その様な「ミニ移住」状況がある。
現在日本の観光産業は、爆発的に増加する中国人観光客を追いかけるだけで精一杯だ。しかし、一方で滞在施設をミニ移住型にしていかないと、次に来る移住型観光客を失うことになる。大切なのはインバウンド数よりむしろ、それに日数を掛けた延べ滞在日数と、落とすお金の総額であろう。
「ミニ移住」顧客に対しレジデンス仕様の部屋を増やし、「Workcation」対応のネット環境「Remotus」や「Sqwiggle」などが使えるようにWiFi回線の速度を上げ、託児施設などを充実させて、あたかも自宅にいるが如く生活できるアコモデーションがトレンドになる日も近い。しかしまだ国交省の役人や大手ディベロッパー、ホテル観光産業にその危機感は見られない。日本の観光産業はこのままオリンピックを迎えてしまうのだろうか?

| 15.08.19

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