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オキシコドン

トヨタ自動車のジュリー・ハンプ前常務取締役(6月30日付で辞任)が麻薬取締法違反容疑で逮捕された事件は、日米の間で「疼痛管理」について大きな違いがあることを浮き彫りにした。
がんや様々な疾病の人、さらには高齢者や傷痍軍人の増加によって、世界中で多くの人々が慢性疼痛に苦しんでいる。それを受けて疼痛管理市場が急速に成長し、世界中で巨大な市場となりつつある。米国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA  http://www.drugabuse.gov/)によると、米国ではここ20年あまりで、医師から処方されたオピオイド系(アヘン系)鎮痛薬の使用が急増。全米で1年間に処方された回数は、1991年の7600回から2013年の2億7百万回にまで増加しているそうだ。実際、世界中のオキシコドン使用者の81%が米国人であると報告されているほどだ。ちなみに日本では、1人当たりの年間消費量が全米平均243.8mgに対して3.6mg、これは他の先進国と比較しても驚くほど少ない。
さらに、オキシコドンなどのオピオイド系鎮痛薬を医療目的以外で使用した経験がある人は、12歳以上の米国人の20人に1人にのぼるという調査結果もあるらしい。このように、米国ではオキシコドンがあまりにも手軽に入手できるため、医療目的以外に乱用して過剰摂取や依存症が深刻な社会問題になっている。覚醒剤のように興奮をうながすものではなく気分を落ち着かせる鎮静作用があるので、米国では社会的責任が大きいインテリ層にも多くの使用者がいるのが特徴だ。
一方、相関関係は明らかではないが、オピオイド系鎮静剤の処方が極めて少ない日本では自殺者数の推移や自殺率の高さは、先進国の中で突出している。2014年版の自殺対策白書によると、先進国の中で日本だけ突出して若い世代での死因トップが自殺である。先日、自衛隊員の自殺の多さも話題になったばかり。薬物の処方及び使用方法との関連が懸念される結果だ。
米国はエリートにとって高度ストレス社会であると言える。そこに薬物の入り込むスキがあるのだろう。ジュリー・ハンプの逮捕は、キャロライン・ケネディー大使の計らいで不起訴となったが、奇しくも日米エリート層の日常のストレス管理の違いを浮き彫りにした。

| 15.07.17

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