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惑星植民

2016年は5月に火星が地球に最接近する。そして、アメリカで昨年興行収入1位を記録した火星探査映画『オデッセイ』が2月に日本でも公開される。火星探査中に遭難しNASAから死亡と認定された宇宙飛行士が実は生き延びていて、自らの知恵で命をつなぎながら地球へ救出されるというストーリーだ。各国がしのぎを削る火星探査計画も続々と動き出し、2016年は火星有人探査が一気に現実味を帯びて来る。
一方、日本の金星探査機「あかつき」が深刻なトラブルから5年を経て見事に生き返り、昨年末金星周回軌道突入に成功したのは記憶に新しい。日本の惑星探査技術は、ハヤブサの快挙以来世界的に高く評価されている。金星は明けの明星、宵の明星と呼ばれ、一番星として古来より地域や人種を問わず多くの人に親しまれてきたが、大きさがほぼ同じでどちらも大気を持っているという点で地球と似ている。しかし、過去の惑星探査機などによる調査の結果、金星の大気は地球とは似ても似つかない灼熱地獄であることもわかっている。だがNASAは、金星は火星よりも遙かに地球に近い為、移住先として注目しているようだ。金星の豊富な太陽光エネルギーを利用し、太陽電池を装備した巨大なヘリウム飛行船を金星の上空に浮かべて、有人探査を行おうと考え始めているのだ。
すでにアメリカでは小惑星の資源採掘を目指す複数の企業が積極的に活動を行っており、アメリカ政府は「2015宇宙法Space Act of 2015」(https://www.congress.gov/bill/114th-congress/house-bill/2262)なるものを制定し、アメリカ企業が宇宙で取得した資源についてはアメリカの所有物であると“勝手”に認めている。アメリカの小惑星資源探査企業が、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が着陸したイトカワを、資源探査にもっとも適した小惑星として狙っているとの情報もある。「2015宇宙法」が日本にもあれば、イトカワは既に日本の領土である。
日本は、スーパーカミオカンデにおける太陽からのニュートリノ発見や質量の確定など、小柴昌俊博士や梶田隆章博士のノーベル賞受賞を、科学的成果と純粋に喜んでいるおめでたい国に見える。宇宙惑星探査の目的において、アメリカ・中国・ロシア・欧州が惑星に植民地としての領土を求めていることを認識するべきだろう。14世紀以降の大航海時代の新大陸発見というモチベーションが、世界では今も脈々と生きていると肝に銘じることが、2016年の世界情勢を見通す上で日本には必要であろう。

| 16.01.08

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