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ロボット不倫

人が人工知能と恋に落ちる映画『Her』さながらの事象が現実に起こっている。
『Her』は2014年第86回アカデミー賞・脚本賞をはじめ計43部門の賞を総なめにした作品だ。手紙の代筆ライターであるセオドアが新型の人工知能OSを手に入れ、スマートフォンやPCにインストールする。実際の体はないものの、OS『サマンサ』の魅力的な声に次第に惹かれていくセオドアがいつしか彼女と恋に落ちるという物語だ。セオドアとの日々の会話などで、OS『サマンサ』が進化する様子には、人工知能であっても恋愛が成立すると感じさせるリアリティがあった。
「人生は一度だけ。不倫しましょう」との過激な宣伝文句で利用者を伸ばした、不倫交際目的のソーシャル・ネットワーキング・サービス「Ashley Madison」(www.ashleymadison.com)。ところがそこに登録されていると思われていた約7万人の女性ユーザーが、実はソフトウエアで作られた「会話ロボット」だったことが判明して話題となった。
同サイトは46カ国でサービスを展開、2013年には日本にも進出して、日本人ユーザーは既に180万人を超えたと話題になった。しかし、この7月にカナダのサイトから、ハッカーによってユーザー情報3200万人分が漏洩するという事件が発生したことがきっかけで、女性ユーザーが会話ロボットであることが明らかになったのだ。会話ロボットで、浮気をしたい女性がこのサイトに無数にいるというイメージを作り出していたことは明らかに詐欺行為だが、不倫かどうかの判断は難しい。
米グーグルは、5年以内に人間に近い検索エンジンが登場し、さらに2029年までには検索エンジンが人間のような能力を持つようなると言っている。また2045年には、機械が人間を超える「シンギュラリティ」と呼ばれるターニングポイントが来るだろうと予言している。
ロボットは、主体である人間に対して何らかのかたちで答えを返す「客体」に過ぎないと考えられて来た。しかし、人は人工知能を持つロボットに感情移入してロボットと“人間関係”が結べたと錯覚してしまう。映画『Her』の題名が客体を意味する代名詞であったことはある意味示唆的であるし、A・Iが人間を超える未来は直ぐそこまで来ているのだろう。

| 15.10.02

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