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マッチポンプ

2016年度の米国の国防予算案は、緊縮路線を転換し、前年8%増の5,343億ドル(約63兆円)と過去最高になる見込みだ。2001年の同時多発テロ前が2,870億ドルだから、何と911以降15年で倍増したに近い。
オバマ大統領は、財政赤字を減らすために国防費を削減する傾向にあったが、「イスラム国」への対応と、ウクライナ情勢をはじめとしたロシアへの対抗などを目的に、国防費を大幅に増額せざるを得ない状況になった。
遡って2003年、ブッシュジュニアは大量破壊兵器を隠しているとして無理やりイラク侵攻を行った。結局大量破壊兵器など見つからなかったのだが、その際最大の利益をあげたのは、チェイニー元副大統領がCEOを務めていたハリバートン社(http://www.halliburton.com/)で、およそ400億ドルの巨利をむさぼったといわれている。米軍需産業はいまや世界の武器市場の75%を占めており、中東はその最大マーケットである。アメリカの経済は、今も昔も戦争なしでは成り立たないようになっているのだ。
今回、「イスラム国」に拘束された二人の日本人が殺害されるという最悪の事態は、「第二の911」と言われたりもしているが、安倍首相の「この道しかない」発言と「イスラム国を決して許さない」発言は、当時のブッシュ大統領を連想させる。しかし、大統領の「対テロ戦争」宣言以降、テロ組織はなくなるどころか数も規模も拡大し、アメリカ市民は日常的にテロに怯える生活を強いられている。日本も同じ道をたどることになるのだろう。
複雑な中東情勢を、東西冷戦時代の世界と同じ単純構造でしか把握せず、「経済も、外交・安全保障も、この道しかない」と言い切って対米追従する安倍政権は、武器輸出三原則も既に変更し、日本のハリバートンに利益をむさぼらせていく。戦争が武器を生むのか?武器産業が戦争を生むのか?「マッチポンプ」とは、正に軍需産業のためにある言葉だ。

| 15.02.06

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