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眼を見るメガネ

世界最大の家電見本市「2015 International CES(Consumer Electric Show)」が、1月6日から9日までアメリカ・ラスベガスで開催された。ネットワーキングの発想に弱いと言われる日本の家電メーカーのプレゼンスは年々下がっており、特に韓国、中国にはやられっぱなしという印象だ。しかし、ここへ来て家電業界以外から面白い出展が相次ぎ、CESの流れが変わって来ているようだ。今回、日本のメガネメーカー「JINS.」(株式会社ジェイアイエヌ http://www.jin-co.com/)が発表したユニークなスマートメガネ「JINS MEME(ミーム)」が、ベストウェアラブル賞を受賞した。
「JINS MEME」 は、レイバンの「Wayfarer」に少し似たデザインのメガネで、レンズの度のある無しにかかわらず利用可。フレームの3カ所(基部、鼻パッド、鼻の上の部分)にある電極が、瞬きや8方向の目の動きを検知し、収集したデータはBluetooth で着用者のスマートフォンに送信され、自動的に分析される。そして、例えば運転中、目の疲れや居眠り運転の危険性があればスマートフォンのアラームを鳴らして、車を停止すべきであることを知らせる。また、1日を通して着用者の集中度を感知、追跡して、職場での効率を最大限に高めることを狙っている。
今回選考理由として挙げられたのは、「JINS MEME」がメガネの外観はそのままに、独自に開発したノーズパッドを通して、瞬きや眼の動きから、疲れなどこれまでにないユニークな生体情報の計測を可能にし、CESにおける数々の先端トレンドを詰め込んだデバイスであること。”普通” のメガネの中にこうした複雑な回路が詰め込まれていると想像することはとてもできない、というものだった。
「JINS MEME」は、スパイツールの懸念を持たれるGoogle Glassなどのメガネ型ウェアラブルデバイスとはまったく異なる、対照的なアプローチを見せている。スマホを眼の近くに持ってくるという発想で、役に立つ情報を求めて身の回りをスキャンするGoogle Glassとは違い、「JINS MEME」は目や目のまわりからの情報を集めて、自分を見直そうというものだからだ。しかも、Google Glassのようにディスプレイやタッチパネルなどが装備されていないので、スタイリッシュで軽量、着用した人を決してテクノロジーで武装したサイボーグのようには見せないところも大きく異なる。
ウェアラブルデバイスには、もともと「意識していない行動のデータ化」というテーマがある。おりしもCES出展メーカーの最大のマーケットになり得る中国では、GoogleとLineが規制を受けて使えない。ネットワーキング支配の思想が強過ぎて、中国のような社会主義構造を持った国では危険だと判断されてのことだ。これからの家電は異文化への理解がないものは淘汰されるだろう。中国とイスラム社会を合わせると、世界の人口の半分以上をカバーすることを忘れてはならない。そのような中で、「JINS MEME」の「眼を見るメガネ」の発想が、全世界に受け入れられる民主的な発想で評価された点は見逃せない。
今後、CESのテーマは、支配的発想と民主的発想の戦いになって行くだろう。

| 15.01.16

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