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大義名分的狂気

年末の紅白歌合戦に、サザンオールスターズが横浜アリーナで行なった年越しライブ会場からの生中継サプライズ出演が新年早々話題になった。
桑田佳祐がヒットラー風の「チョビ髭」をつけて歌ったのは「ピ-スとハイライト」と「東京VICTORY」の2曲。中でも「ピ-スとハイライト」は、2013年8月に発売された時、尖閣と竹島で東アジアの政情が不安定化する中、歌詞の政治風刺が強過ぎると話題になった曲だ(http://j-lyric.net/artist/a000623/l02dd55.html)。 明るくポップな曲調だが、現在の日本や世界を取り巻く情勢、国際紛争がテーマになっており、公式PVでは安倍首相や韓国の朴槿恵大統領らのお面をかぶった人物が登場している。当日は、スクリーンに世界中の紛争の映像が映しだされ、桑田は、「都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は…狂気(Insane)」とNHKの紅白で熱唱したのだ。NHKはよくぞ放映した。紅白の中継直前、ライブ会場では『紫綬褒章』を見せながら受賞のエピソードを話した揚句に、勲章なんかオークションだと言わんばかりに、もらってしまった自分への言い訳とも自己批判ともとれる行動をとった桑田を官邸はどう捉えただろうか?
ミュージシャンや芸術家が、自らの作品を通して自分の政治信条を明らかにし、時の政権を賛美もしくは批判することは、古今東西行われて来たことだ。今回のサザンが与えたインパクト、TVとネットによる複合的な反応は、ミュージシャンのそうした姿勢が日本国民の半分が見ていたといわれる紅白歌合戦で映し出されたことで最高潮に達した。ネットでは、この歌を米国批判であり、安倍批判であり、韓国や中国寄りの歌だとか、平和のための歌でこれまで安倍政権に抑圧されてきたNHKがよくやった、など賛否両論の嵐が巻き起こり、サザンと桑田の狙いは見事的中した。
明けて1月4日にTBSの「サンデーモーニング」は、戦後70周年と絡める形で安倍政権とヒトラーの類似性を指摘した。第2次世界大戦を振り返りながら、ヒトラーが群衆操作のために経済政策を使っていた点や群衆が反復・断言に弱い事を解説し、今の安倍政権のやり方と似ているとしたのだ。
サザンも「サンデーモーニング」も、経済一辺倒のアベノミクス、その裏で米国追従政策を取り、「この道しかない」と首相が言い切る『都合のいい大義名分(かいしゃく)』に警鐘を鳴らした。今年は、首相の戦後70周年談話に注目だ。

| 15.01.09

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