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妖怪セラピー

グッズを発売すれば即完売、限定ショップを開店すればグッズが売れすぎて予定よりも早く閉店してしまうなど、第2のポケモンの呼び声も高いアニメ「妖怪ウォッチ」。今年1月にTV番組が始まると大人気になり、10月からは韓国でもアニメ放送がスタート、12月からはウォッチとメダルも発売になる。今後アジア各国でも展開が見込まれているそうだ。
ストーリーは、小学5年の主人公ケータが「不思議な時計(妖怪ウォッチ)」を手に入れてから妖怪が見えるようになり、その妖怪と友達になっていくというもの。「日常の不思議な出来事はすべて妖怪のしわざ」というのが、物語のカギでありコンセプトになっている。 寝坊したのは妖怪のせい、 あの子にフラれたのは妖怪のせい、 ピーマンが食べられたのは妖怪のせい、 ウンチが臭いのは妖怪のせい、 学校でトイレに行きたくなる気持ちは“モレゾウ”という妖怪に取りつかれているから?と、なんでも誰かのせいにする。悩みがそのまま妖怪になり、ダジャレ要素でネーミングされるのが面白い。
一方、悩みを妖怪のせいにするというセラピーの手法があるそうだ。妖怪が信じられていた時代のストレスマネジメント手法を利用する「妖怪セラピー」、自分がかかえている問題を妖怪に託して外在化し、自分を責めずに本人と切り離すという療法だ。語り継がれてきた「かっぱ」や「あずきあらい」など、子供の頃は不思議さに心をわくわくさせて想像力をふくらませ、嬉々として語り合う反面恐ろしい存在でもあった。そうした妖怪について語ることで心のすき間を埋めてきた、その“効用”を利用しようというものらしい。あえて妖怪を媒介にすることで妙な深刻さから逃れられる。「妖怪ウォッチ」が子供の心をつかんだのも、まさに妖怪のしわざにして解決するストーリーに癒され強い共感性が生まれるからだ。
思えば日本人は昔から、人の力でどうにもならない病気や天災を妖怪や神様のせいにしてきた。いくら働いても豊かにならないのは「貧乏神」のせい、水害は「竜神様」が怒ったから、飢饉は「山神様」の怒り、気の病は「狐憑き」だ。問題の主を祀り、解決法はみんなで祈ってきたところがあった。今回の選挙で、効果がよくわからない「アベノミクス」を祀り皆で拝んで雨乞いをするのも、「妖怪セラピー」なのだろうか?

| 14.12.12

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