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GoogleX

米IT企業を代表するGoogleの未来部門Google X Labに生命科学部門があることはあまり知られていない。Andrew Conrad氏が率いるこのチームは、がんやその他の病気の撲滅を目指して、体中をIT技術によりパトロールするナノテクノロジー医療系プロジェクトを発表した。
ナノ粒子の医療活用は、カリフォルニア工科大学やマサチューセッツ工科大学、最近ではジョージア大学もガン治療薬の代替手段として探求しており、Googleも“Google X・ライフサイエンス”に 100人の部隊と資本を投じて参戦したというわけだ。
Google Xが開発したナノ粒子は、幅が赤血球細胞の1,000分の1未満の大きさで、がん細胞などに付着してマーカーになるよう設計されている。多様なナノ粒子を入れたピルを飲み込むことで血管にマーカーを送り込み、体内にある特定の細胞、タンパク質、あるいはその他の分子を探し出してそれに付着させる。これらのナノ粒子は磁気を帯びているため、それぞれが標的とする細胞に付着したまま、手首に装着する検知用端末の近くに(血管内を移動して)集まり、各種の病気の兆候を端末に“報告”するという。このプロジェクトの目標は、がんやその他の病気について早期に警戒し、最も効率的な治療を探ることにある。このシステムによって、医師が施していたあらゆる検査が同時にかつ瞬時に可能になるそうだ。
Google Xはまた、スマートコンタクトレンズを使って涙の成分から血糖値の変化を計測して、糖尿病を監視しようというプロジェクトなども進めている。IT技術とライフサイエンスを結びつけたさまざまな実験的プロジェクトを立ち上げて、究極の予防医療を行い、あわよくば病気や老化自体までなくしてしまおうとするおう盛な意欲と野望を持っている。
今、医療/ヘルスケア業界ではITベンチャーの登場が相次ぐことで、従来とは違う視点・発想、コンセプトの製品やサービスが生まれつつある。例えば、日本国内でも患者数が300万人を越えて社会問題になっている認知症、特にその大半を占めるアルツハイマー病の克服などは世界レベルの至上課題である。超早期の予防的治療が必須である今、アルツハイマー病の根本的治療・予防薬の創製を見据えて、異分野のITとの融合がまさに期待される分野と言える。
GoogleのようなIT企業が医療に挑戦する発想が世界を動かしていく。かつて日本を代表する企業SONYやPanasonicが、未だに4Kテレビなどにこだわっている姿を見るに忍びない。新しい分野に挑戦し続ける姿勢のみが、ブランドを育てていく“力”だと思うのだが。

| 14.11.07

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