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だんぼっち

バンダイナムコグループの株式会社VIBEが昨年10月から59,800円で発売している、段ボール製の「歌も演奏もおまかせ!」防音個室「だんぼっち」(http://www.danbocchi.com/)だが、次第にその評価が高まってきている。「だんぼっち」は、オンラインゲーム時のボイスチャットやカラオケの練習、自主制作動画のレコーディング、一人用ホームシアターをイメージして開発された“箱”だ。一人で入って、完全に一人だけの空間を作ってしまう。見た目にはシュールだが、性能と手軽さ、安さ、防音性能が評価されており、“箱男(女)”になって自分の世界に没入できる魅力がある。
最近、外で人と交わる代わりに「だんぼっち」に入って映画を観たり、1人でファミレスやディズニーランドに行き写真を撮ってSNSにあげるなど、ひとりぼっちを充実させて過ごす現象が注目され「ぼっち充」なる新語が生まれている。ちなみに「だんぼっち」のユーザーも、中で映像や音楽を視聴する時のプライベートシアターのような没入感を吹聴したり、独自にカスタマイズを施す様子をTwitterやブログに投稿したりして、「だんぼっち」の楽しみ方を広く紹介している。さらに798,000円出すと、有限会社フレスコが発売する、カプセル型で画面や音響がすぐれた “大人の秘密基地” 「KAKUREYA」(http://kagu-cozy.co.jp/SHOP/gno-001.html)もある。
博報堂ブランドデザイン若者研究所は、「友人と一緒より、1人でいたい」という若者が増えているのではないかと分析している。「1人で過ごす時間を増やしたい」と考えている若者が1996年は28.8%だったのに対し、2012年には36.5%と着実に増加しているという。
つまり、自由気ままに過ごすことができる「ぼっち充」は、あくまで本人は一人を楽しんでいるので本人的には「ぼっち」ではない。そして実はSNS上でつながっているので、「ぼっち」だけど「ぼっち」じゃないということのようだ。
人間だれしも好きな事に没頭し、一人悦に入るということはあるが、積極的に“箱”に入って楽しむとは…安倍公房の『箱男』のシュールな生活は時代を見越していたのかと今更ながら感心する。たしか『箱男』には看護婦の娘に5万円で箱を売ってくれと言われて箱男が困惑するというシーンがある。「だんぼっち」が59,800円なのは偶然なのか?

| 14.09.19

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