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「自分を見る」メガネ

アイウエアブランドのJINSが、まばたき、視線の動きなどから自分の疲れ具合や眠気の強さなどを知ることができる「自分を見る」メガネ(https://www.jins-jp.com/jinsmeme/)を発表した。このようなITガジェットが、家電メーカーでも光学機器メーカーでもなく、メガネメーカーから発売されることで話題になっている。鼻パッドなどにセンサーがあり、所持するスマートフォンなどにデータを転送する、新たなウエアラブルコンピューターの登場だ。
目の動きは脳と連動しているため、ここで集めたデータは集中度などを測る指標となる。そこで、東北大や芝浦工業大と協力し、メガネの鼻パッドと眉間(みけん)部分に仕込むセンサーを開発。眼球の手前側と奥でかすかに異なる電位差から目の動きを調べ、無線通信でスマホやパソコンに送られるデータから装着者がどのような状態で物を見ているかを解析できるという。
まずはメガネをかけた際の瞬きの回数や速度あるいは眼球の動きから、「疲れ」と「眠気」を可視化することに成功している。それによって自動車の運転時の眠気をモニターし、警報を出して居眠り運転を防いだりすることもできるという。さらにその人の眠くなっていくパターンを抽出できれば、そのパターンに近づいた時、「そろそろあなたは眠くなります」と、未来の自分の状態を予告することも可能になる。また、フレームには頭の動きを測るセンサーもあり、運動中の姿勢や歩数、消費カロリーまで測ることができるという。
これまでウエアラブルコンピューターといえば、カメラなど本来身につけられなかった装置をいかにして身につけるかを志向していた。パソコンやスマホの操作をハンズフリーにするとか、カメラやパソコンを単に纏うことに注力していた。それは、アメリカ人科学者のVannevar Bush氏が『As We May Think』という論文で示した「メメックス」(Memory Extender)と呼ばれる装置の影響が根強く、研究者たちがそこから逃れられなかったからだろう。しかし、このJINSの「自分を見る」メガネは、機械の方から人に寄り添ってくるという、まったく逆のアプローチをしているところが新しい。
眼の動きは個人個人でその特徴が違うので、「自分を見る」メガネで取るデータはあくまでも自分だけのパーソナライズされたものだ。目は口ほどに物を言うというが、脳の出先機関である目の動きのデータを継続的に見ていくことにより、これまで気づかなかった“自分”を客観的に見ることにもなるのも面白い。
鏡が物理的に自分の外観を客観視させるとすれば、「自分を見る」メガネは、自分の脳の動きを客観視させる画期的なものだ。

| 14.08.08

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