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事実婚が認められる中で、戦後の日本国憲法下における戸籍制度の矛盾に日本国民は直面している。また未婚率が高くなる一方で、2回以上結婚経験を持つ多婚が増えている。
厚生労働省の調査によると、2013年には全国で年間約67万組が婚姻届を、約24万組が離婚届を役所に提出しており、3組に1組のカップルが離婚している。そして、離婚した男性の7割、女性の6割が再婚し、結婚するカップルのうち4組に1組は男女どちらかが、またはともに再婚ということになる。離婚率が高くなり独身者やシングルマザーが多くなるのが先進国の傾向だが、日本のように未婚や多婚(何度も結婚を選択する)が増えているのは、先進国の現象としては珍しい。
ちなみに旅行口コミサイトトリップアドバイザーの「世界の結婚事情」(http://tg.tripadvisor.jp/love/)によると、エジプト、中国、トルコなど、男女差別の大きい国やイスラム諸国では当然のことながら結婚数が多く離婚数は少ない。それに対し、スペイン、ベルギー、フランスなどヨーロッパ諸国は、結婚数が比較的少なく離婚数は多い。女性に経済力がある国はそもそも結婚が少ないし離婚もしやすい。女性が経済力を奪われている国は結婚が早い上に、離婚も選択しづらいと言えるのだろう。そうした中で、日本の結婚と戸籍制度は、先の戦争をはさんだ2つの憲法のギャップや欧米化との狭間で迷走しているようにも見える。
そもそも世界では珍しい法律上の「戸籍」とは、7世紀以降日本を支配した天皇家を頂点とした律令制における身分制度の下に出来上がったものだともいえるだろう。したがってその頂点にある天皇家には戸籍はなく、パスポートもない。大日本帝国憲法での日本国民は天皇の臣民と位置づけられていたが、天皇は“神”であったから、国民が戸籍によって臣民と位置づけられていることに矛盾はなかった。しかし、戦後の新憲法下で天皇が“人”となり象徴とされたことにより、それまでの戸籍制度は頂点のよりどころを失った。にもかかわらず、結婚により新しい籍を作ることで、事態は理解されぬまま大きな混乱が存在していると言えないだろうか。新憲法下では日本人は臣民ではありえず、欧米と同じように戸籍制度を廃止するべきだという声も高まっている。
これまで戸籍制度があったのは、日本と、植民地支配時代からの台湾、韓国の3国だった。しかし台湾は戸籍制度が停止状態にあり、韓国も戸籍制度からの離脱へと巨歩を進めている。社会の基礎を戸籍制度においているのは、世界で唯一日本だけになってしまったようだ。
日本の女性の社会進出が進まないのは、ひょっとして多くの日本人が旧天皇制にとらわれ、未だに家長は男性でなければならないと思い込み、新憲法下における新制度を理解せず日本社会をゆがめているせいかもしれない。
そう言えば、天皇陛下や皇太子のご家族もその新制度との矛盾に深く悩まれているように見えるが、これは偶然だろうか?第9条の積極的解釈も大切だが、戸籍に頼らず、社会制度が国民個人を守れるようにする先進的な憲法解釈も必要なのではないだろうか。

| 14.07.18

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