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デザイナーズ銭湯

女性たちが会社帰りに立ち寄る「デザイナーズ銭湯」の人気が急上昇中だ。時代遅れの施設のように感じる銭湯だが、近年、女性も行きやすく清潔でかわいい銭湯が増えている。
「デザイナーズ銭湯」とは、建築家がデザインして、外観や内装、浴室にこだわった銭湯のこと。古くからの銭湯をリニューアルしたものが多く、アーバンテイストなモダンデザインもあれば昔ながらの雰囲気を生かしたレトロ調など、様々なデザインの銭湯が登場している。
都内の銭湯は、昭和43年の2687軒をピークに平成26年には696軒まで減少している。後継者不足や燃料費の高騰などで厳しい状況が続いているが、「デザイナーズ銭湯」は江戸町民文化の本質をついて、銭湯復活をリードする気配だ。
中でも人気があるのは、中央区にあるアーバンテイストな銭湯「湊湯」(http://www.minatoyu.jp/)。黒漆喰を思わせる入口は老舗料亭のような貫禄がある。「南青山 清水湯」(http://shimizuyu.jp/)は、100年以上の歴史を誇る超老舗だが、清潔感のある白を基調とした浴場のタイルは、女湯はスペイン製、男湯はイタリア製というこだわりよう。もはや町の銭湯とは言えず、大人460円で入れるなら高くはない。
意外や銭湯が外国人に人気がある点も見逃せない。東京・浅草の「蛇骨湯」(http://www.jakotsuyu.co.jp/)は、江戸時間から続く銭湯だが、観光地・浅草に近いこともあり、1日に30人以上の外国人観光客が訪れているようだ。この銭湯はルイ・ヴィトンが出版する「シティガイド東京」に掲載されたことでも有名になった。さらに、東京・大田区では『外国人のための銭湯の入り方』(http://www.youtube.com/watch?v=fMnb56OLnek&feature=youtu.be)という動画を世界に向けて公開している。
日本の入浴文化の一端を支えてきた銭湯。かつて銭湯は極楽浄土の入口であると同時に社交場で、地域に無くてはならない存在だった。そして昨今、古代ローマ時代の浴場と、日本の風呂(銭湯)をテーマにしたタイムスリップコメディ漫画『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ著)の人気も後押しをして、特に人間関係が希薄といわれる都会において銭湯を見直す気運が高まりつつある。1日の終わりに1度湯につかることで、無意識に母胎の羊水に戻るような安心感を得る意味もあるのではないだろうか?温泉であっても銭湯であっても内風呂であっても、日本人は1日1回リセットする為に湯に浸かっているのだろう。この行為は銭湯の持つ社交性とは違う効用の一つで、外国人には特に新鮮だ。
かつて銭湯が地域社会のシンボリックな存在であったように、デザイナーズ銭湯も洗うという機能面を通り越して、日本が生み出した渡世の知恵を現代に生かすトレンディーな機能を担っていくと面白い。

| 14.06.20

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